研究実績の概要 |
末梢からの体性感覚入力は,大脳皮質の皮質活動を変動させることが知られている.そこで我々は,簡便かつ安全な機械的触覚刺激を用いて運動および感覚機能を変化させることができれば,新たなリハビリテーション手法になると考え,本研究では,刺激様式の異なる機械的触覚刺激による介入が,運動遂行に関与する一次運動野と感覚情報処理に関与する一次体性感覚野の興奮性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした. 我々は,これまでに指先を対象とした20分間の機械的触覚刺激により一次運動野の興奮性が変動し,その変動は刺激パターンに依存することを明らかにした(Kojima et al., Neural Plasticity, 2018).また,刺激面内を刺激が移動する刺激(複雑刺激)方法では,一次運動野の興奮性が増大するとともに手指の運動機能が向上するが,刺激面全体を同時に刺激する刺激(単純刺激)方法では,運動機能の変化が認められないことを明らかにした(Under review).さらに我々は,機械的触覚刺激による介入が一次体性感覚野の興奮性に及ぼす影響を明らかにするために,20分間の介入前後で脳磁図を用いて皮質活動を計測した.その結果,単純刺激では一次体性感覚野の興奮性が増大し,複雑刺激では一次体性感覚野の興奮性が減弱した.また,複数種類の機械的触覚刺激手法を用いて,介入前後の感覚機能を評価した結果,介入による感覚機能の変化は刺激様式および介入前の感覚機能に依存して変化することが明らかとなった(Under review).これらの結果は,機械的触覚刺激をリハビリテーションの目的に応じて使い分けることができ,より効果的なリハビリテーション介入を提供するための一助になると考えられる.
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