研究実績の概要 |
近隣の整形外科クリニックに外来通院する保存治療中の変形性膝関節症患者23名を対象に,整形外科医によるレントゲン写真を用いた重症度分類,膝関節屈曲角度,膝蓋骨下方可動性,大腿遠位部の組織柔軟性を評価した.膝屈曲角度は仰臥位と腹臥位で測定した.膝蓋骨下方可動性は膝蓋骨可動性測定装置を用いて3回測定し,身長で補正し,平均値を分析に用いた.大腿遠位部の組織柔軟性は,評価者内および評価者間信頼性が良好なMyoton Pro (Myoton AS, Estonia)を用いて,(1)大腿直筋筋腹,(2) 膝蓋骨基部から近位2 cm,(3) 膝蓋骨基部から近位4cm,(3)のそれぞれ内側と外側2cmの5箇所を計測した.測定肢位は,膝関節0度と45度で測定した.比較対象群として,健常高齢者17名,若年健常者10名との比較を行った. 背臥位,腹臥位での膝関節屈曲角度の比較では,変形性膝関節症患者は,健常高齢者,若年健常者に比較し,有意に低い角度であった.膝蓋骨下方可動性は,変形性膝関節症患者は,健常高齢者,若年健常者に比較し,有意に低い可動性であった.つまり,変形性膝関節症患者は,膝の曲がりが悪く,膝蓋骨の下方への可動性も低下していることが明らかとなり,膝関節屈曲角度と膝蓋骨下方可動性は,有意な相関があった(p < 0.01, r = 0.72). さらに大腿遠位部の組織柔軟性評価において,変形性膝関節症患者では,大腿直筋筋腹以外の大腿遠位部の4箇所で,常高齢者,若年健常者よりも柔軟性を示すパラメーター(Elasticity,Stiffness,Tone)が有意に高い値を示した. 以上の結果より,変形性膝関節症患者において,膝蓋骨の下方可動性の減少と膝関節屈曲角度の減少との関係が明らかとなり,さらに,大腿遠位部の軟部組織柔軟性の低下が膝関節屈曲角に影響を及ぼす可能性が示唆される.
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