研究課題/領域番号 |
17K13079
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
田中 貴士 金沢医科大学, 医学部, 助教 (30734694)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高齢マウス / 炎症 / 自発的運動 / 脳損傷 / 神経回路再編 |
研究実績の概要 |
脳卒中などの脳損傷後にみられる運動障害などの機能障害の改善には、失われた神経回路の再編が必要である。近年、若齢期の成体マウスにおいて、損傷を免れた脳および脊髄の神経が代償的に神経回路を再編させることで、ある程度の運動機能の回復が得られることが明らかになってきた。しかし、高齢期のマウスにおいては若齢期にみられるような脳損傷後の神経回路の再編が顕著に制限されること見出した。本研究は、高齢期の神経回路の再編を阻害している機序を解明し、有効な治療法へと結びつけることが目的である。 平成30年度は昨年度に引き続き、20~22月齢に達した高齢期のマウスにおいて脳損傷の前後8週間にわたり自発的な身体運動を実施させ、脳損傷後の麻痺側の運動機能および脊髄における神経回路の再編の程度を評価した。運動を実施した高齢期のマウスにおいては、神経回路の再編が促され、麻痺肢の運動機能の回復が得られることが明らかになった。但し、完全な機能回復までは得られていない。 現在は、若齢期の成体マウスに対し炎症誘発剤を投与することで、脳損傷後の神経回路の再編や運動機能の回復が負に制御されるか否かの実験を実施している。さらに、脳損傷の前後に回収した運動群や非運動群の大脳皮質運動野および血液サンプルの解析を進めており、神経回路の再編に関与の大きい因子を同定している。遺伝学的に影響因子を増加または減少させることで、真に神経回路の再編に影響をおよぼす因子を特定していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳損傷後の脊髄における神経回路の解析、運動機能の評価などは概ね順調に進行している。また、脳や血液サンプルの解析も進めており、高齢期の神経回路の再編を阻害している有力な候補因子を抽出している。
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今後の研究の推進方策 |
高齢期のマウスにおける自発的な身体運動によって、脳損傷後の運動機能の回復および神経回路の再編が得られることが明らかになってきた。今後は、大脳皮質運動野のRNAや血液サンプルの解析をさらに進め、脳損傷後の炎症に及ぼす運動の影響を明らかにし、高齢期の機能回復が効果的に得られるよう研究を進めていく。
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