計画していた「確率共鳴現象がCIPN患者の運動障害へ及ぼす効果の検証」を進めることができており,化学療法誘発性末梢神経障害(chemotherapy induced peripheral neuropathy: CIPN)症例20名および高齢者15名の計測を終了させることができた.その結果,確率共鳴が高齢者の手指巧緻性を向上させるという結果だけでなく,CIPN症例の手指巧緻性をも向上させるという結果が得られた.この結果は,ヒトの手指巧緻性は単なる筋出力だけで構成されておらず,感覚フィードバック情報に基づく誤差修正プロセスが大いに含まれ,確率共鳴を利用した体性感覚システムの強化によって手指巧緻性が向上することを示唆する.加えて,確率共鳴を引き起こすランダムノイズ刺激装置を無線化したデバイスを開発した.この無線デバイスで同様に効果検証したところ,CIPN患者の体性感覚機能のみならず,運動障害も同時に改善させるのかを確認することができた.現在のところ,症例数が計画よりも下回っているため,今後は症例数を増やして検証を続ける予定である.また,症例によって効果がバラつくこともあるため,その原因を後ろ向きに分析していく.本研究で開発した無線型のランダムノイズ振動装置は,無線型で装着に対する違和感もないため,装着しながら日常生活を送ることも可能である.このような取り組みは,CIPNの体性感覚機能および運動機能を改善させることができるため,がんサバイバーの生活の質や復職を支援するリハビリテーション手段となるであろう.
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