研究課題/領域番号 |
17K13086
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
岩波 潤 信州大学, 医学部, 講師 (00625931)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自動車運転 / 危険認知 / 脳卒中 / 発汗 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,「自動車運転認知行動評価装置」(特許第5366248号)を利用し,脳卒中患者の自動車運転の特性を明らかにすることである.具体的には,脳卒中患者を対象に上記装置を使用して,模擬運転テストを実施し,既存の健常者データとの比較から脳卒中患者の模擬運転時のハンドル・アクセル・ブレーキの操作応答や手掌部発汗反応(Palmar sweating response:PSR)と皮膚電位反射(Skin Potential Reflex:SPR)を用いた危険予測能力の特性を明らかにすることを目的としている. 令和元年度は信州大学医学部附属病院にて,対象者からデータ計測を行う予定であったが,実験装置の故障のため,再構築および調整が必要になったため該当装置を作成した株式会社スキノスに当該装置の改修を依頼した.年度途中に装置の改修が完了したため,データ計測に向けた準備を行った. 平成30年度・令和元年度に行った準備を踏まえ,令和2年度は修理が完了した携帯型「自動車運転認知行動評価装置」を用いて,信州大学医学部附属病院リハビリテーション部スタッフの協力の下,データ計測を行った.令和2年4月の時点で16例のデータ計測が完了している. ただ,新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,対象となる患者の入院数の減少などにより,予定していた被験者数の確保が不十分となってしまった.そのため,令和3年度に科学研究費助成事業補助事業期間再延長の申請を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,対象となる患者の入院数の減少などにより,予定していた被験者数の確保が不十分(目標症例数の約6割)となってしまったため,やや遅れていると判断した.令和3年度に科学研究費助成事業補助事業期間再延長の申請を行い,被験者数の確保を行う.
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今後の研究の推進方策 |
今後は脳卒中患者の自動車模擬運転時の操作反応および危険認知能力を明らかにすることを目的として研究を推進する.具体的な手順として,再構築した装置を用い て,模試運転時のハンドル・アクセル・ブレーキの操作反応と手掌部発汗反応等のデータを計測し,得られたデータを健常者データと比較することで,脳卒中患者の応答特性を明らかにする. 今後の手順は以下の通りである. ①被験者の決定:被験者は脳卒中患者のうち,日常生活で介助を要するほどの障害がなく,生活行為が自立していること,自動車運転の再開を希望していることを条件とする.②実験及び解析:脳卒中患者15名を対象に携帯型自動車運転認知行動評価装置を用いた模擬運転テストを実施する.運転映像には現有する市街地映像と住宅地映像(各5分)を使用し,危険予測場面,危険場面などの場面に分け,ハンドル・アクセル・ブレーキ・手掌部発汗反応の量や応答潜時を分析する. ③健常データとの比較および応答特性の抽出:我々は本研究で実施する実験条件で得た健常者データをすでに保有している.保有するデータには若年から高齢まで男女200名のデータが含まれており,本実験の対象者と年齢・性別をマッチングさせることが可能である.マッチングさせた健常者データを「健常者群」,本実験で得られるデータを医「脳卒中群」として,同一場面におけるハンドル・アクセル・ブレーキの操作反応,手掌部発汗反応を比較検討し,自動車運転時の脳卒中患者の応答特性を明らかにする. ④さらに脳卒中患者のデータを用いて、左半側空間無視、左右運動麻痺、認知機能障害等の障害毎に、直進走行、交差点の右左折、一時停止、ボール飛び出し等の運転場面毎の応答特性を明らかにし、障害特性に応じた判定プログラムを作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験装置の故障および新型コロナウイルス感染症拡大の影響による被験者数の確保困難により,被験者を対象としたデータ計測が十分に行えていないため,被験者に支払う予定であった謝金なども発生せず,研究期間を延長したため次年度使用額が生じた. 翌年分として当該助成金を使用するにあたり,被験者に対する謝金,実験で使用する消耗品を予備を含め購入するために使用させていただく.
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