本研究は人と接触できる柔軟な物体を操作するロボットハンドの開発により,接触相手の気持ちを感じ,自分の気持ちも相手に伝える手法を提案することが目的であり,三年間に渡り以下の3つの項目について研究を行ってきた. 1.人の撫でる動作の計測とロボットハンドの必要様相の検討:人が他人を撫でる時の動作を観測し,撫でられる方からの感覚も調査した.更にマネキンとホースプレートを用いて,撫でる動作に必要な力も測定した.上肢の動作(姿勢と発揮力)をより効率的に測るため,皮膚表面変形の計測に基づいた計測手法も提案し,検証を行っている. 2.撫でる動作に適するロボットハンドの開発:まず,自由度と形が異なるロボットハンドを複数個試作し,人に接触する時の感覚を比較した.人を接触するハンドに関節の柔軟さ,表面の柔らかさ,接触の暖かさ,が必要な要素と認識した.それに基づき,人の手と同じ形状と構造を持つロボットハンドを試作し,その有効性を検証した. 3.撫でる動作の生成:開発したロボットハンドをロボットアームに取り付けることで,人の撫でる動作を生成し,その動作の有効性を物理的と生理的な効果を検証した.インピーダンス制御を用いて,圧力と動作速度が制御可能な撫で動作を実現した.実験では開発した撫でる動作システムと人の撫でる動作を比較し,撫でる速度の影響も検証した.計測結果から人間の動作を物理的に模倣することができることを確認した.更に,主観的評価手法生理学的評価手法を用いて多角的に評価し,作成した撫でる動作システムの有効性を検証した.
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