近年,偏平足障害の発生要因として足根骨の形態変異(形態的な個人差)が重要視されている.特に踵骨の形態変異が偏平足の発生に関与すると推察されるが,実際にどのような骨形態の変異が偏平足の病態発生に関与するかは未解明である。そこで本研究では,仮想荷重装置を用いて扁平足の内部で生じる骨動態の特徴とその骨形態要因を探索し,扁平足障害の病態発生メカニズムに迫ることを目的とした。具体的には、仮想荷重装置の妥当性・再現性の検証、踵骨形態の変異の調査、扁平足症例における踵骨形態と仮想荷重に伴う踵骨の動態の特徴を調査した。 作製した仮想荷重装置は,自然立位と同様の足底圧状態(足底接地面積、足底圧、足圧中心位置)を再現し、前後方向の足圧中心位置以外の項目においては,中等度から高度の再現性を示した。71足のCT画像を対象とした踵骨の形態解析から,踵骨後関節面の前額面上の傾斜角度に大きなバリエーションが存在することが示された。さらに,症例数が少ないが,実際の偏平足症例においては,非荷重・荷重条件ともに踵骨の外反・内旋角度が高値を示す可能性が示唆された。 本研究から,踵骨後関節面の前額面上の傾斜角度に大きな個人差が存在し,この形態変異が偏平足に特徴的な荷重条件における踵骨の外反角度の増大を引き起こす可能性が示唆された。扁平足内部の骨格構造および骨動態の特徴を解明することは、扁平足障害の病態発生メカニズムの解明のために重要であり,扁平足障害に対する効果的なリハビリテーション治療の開発,膝関節を含む下肢の運動器疾患に対する新規保存治療方法の開発に貢献すると考えられる.
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