研究課題/領域番号 |
17K13094
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
鈴木 貴子 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 助教 (60549343)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 振動刺激 / 映像観察 |
研究実績の概要 |
H30年度は,H29年度に引き続き,運動-知覚の中枢神経回路への影響を検証するための新たな実験プロトコルを実施した. 対象者は右利き健常成人20名とした.腱振動刺激(Tendon Vibration;TV)による運動錯覚と映像観察の組み合わせが運動出力(皮質脊髄の興奮性)に影響を及ぼすのかについて明らかにするため,経頭蓋磁気刺激(Transcranial magnetic stimulation; TMS)を用いて橈側手根伸筋(Extensor carpi radialis muscle; ECR)と橈側手根屈筋(Flexor carpi radialis muscle; FCR)から運動誘発電位を記録した.TVはECRのみに行い,手関節の屈曲の運動錯覚を誘発した. 実験条件は,安静条件(黒色画面の観察のみ,TVなし),対照条件(モザイク静止画像の観察とTVあり),感覚競合あり条件(手関節の静止画像観察とTV),感覚競合なし条件(手関節の屈曲動画とTV)であった.約80HzのTVを5秒間継続し,TV開始後4秒時点でTMSを,各条件で20回実施した. その結果,安静条件と対照条件の比較では,対照条件のECRのMEP振幅が有意に高くなり,一方FCRのMEP振幅には有意差を認めなかった.そこで,対照条件におけるMEP振幅値で感覚競合なし条件と感覚競合あり条件のMEP振幅を補正して比較したところ,ECRでは感覚競合あり条件の方が高く,FCRでは感覚競合なし条件の方が高かった. H30年度の実験により,TVは伸張反射経路の促通を介して刺激筋のMEP振幅を増加することが示唆された.また,運動錯覚と映像観察を組み合わせた場合,錯覚と映像にギャップを生じさせた条件でECRに投射する皮質脊髄興奮性が高まり,錯覚と映像をマッチさせた条件でFCRに投射する皮質脊髄興奮性が高まることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
腱振動刺激と映像観察に関する皮質脊髄興奮性の,健常者を対象とした基礎的研究のデータ収集と解析を終え,論文投稿準備を行っているが,一方,上肢運動練習プログラムの開発については,具体的方法の提案には到達していないため.
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今後の研究の推進方策 |
腱振動刺激と映像観察に関する皮質脊髄興奮性の基礎的研究から得られた結果を基に,腱振動刺激と映像観察を用いた上肢機能練習プログラムを決定し,試行する.
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次年度使用額が生じた理由 |
H30年度に,経頭蓋磁気刺激の刺激コイルを購入することと,映像再生と腱振動刺激システム同期のための開発費を計上していた.刺激コイルは,磁気刺激装置の不具合を解消できず,代替機器により実施したためコイルの購入を行わなかった.映像再生と腱振動刺激のシステム同期の具体的方法の確定に至らなかったため執行しなかった.次年度は,主に映像再生と腱振動刺激のシステム同期の開発や論文投稿にかかわる費用に使用する計画である.
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