血管の3次元構造可視化を実現するために、近赤外光とレンズアレイを用いた血管の非接触3次元イメージングシステムを構築した。本年度はヒトの手の甲を対象とした評価を中心に行った。 血液中のヘモグロビンは近赤外光を強く吸収するため、人の指や腕に近赤外光を当てて撮影を行うと、血管部分のみが黒く映る。この近赤外光により取得した画像と画像処理により焦点位置を変えた画像を生成する技術(リフォーカシング)を組み合わせることで、血管の3次元位置を取得することができる。しかし、生体組織は強い散乱性を持つため、取得した透視像は散乱光の影響を受け、血管とそれ以外の部位の境界がぼやけてしまう。この画像のぼけは血管の位置推定の精度に大きく影響する。そこで、レンズアレイを用いて角度フィルタリングを行い、散乱媒質を通過した光の直進成分と散乱成分を分離することでレンズアレイを通過した散乱光の強さを推定し、推定した散乱光の強さを用いて、直進光のみを推定することで、鮮明な画像を得ることができる。前年度までは血管を模擬した対象物を用いて検証を進めており、その結果に基づいてヒトの手の甲を用いた検証を行った。しかしながら、当初想定していたほどの性能を出すことができなかった。これは光量の問題であると考えられ、光源部分のさらなる最適化が必要であると考えられる。試作システムにおいては、実験の結果、深さ4mmの血管について深さ推定が可能であることを確認した。
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