研究の基本的スキルの獲得(Matlabによるデータ解析手法など)を進めた。併せて、研究テーマに沿った実験パラダイムの考案を進め、機能的近赤外分光法(fNIRS:functional near-infrared spectroscopy)を用いた神経活動計測のための系を構築した。さらに健常成人ならびに片側運動麻痺を伴う脳卒中患者を対象とした実験を積み重ねた。先行基礎研究として、健常若年者を対象とした24症例に対して視覚条件と振動条件の探索課題を行い、2つの条件での探索効率を比較しどちらが優位か計測することと同時にfNIRSを用いて運動課題中の前頭前野活動を測定した。この結果、視覚条件課題では個人差がみらせず、振動条件課題では個人差を認めた。その個人差を反映する脳基盤として両側背外側前頭前野の脳活動であることが示された。この背外側前頭前野に内在する脳機能としてワーキングメモリの呼ばれる脳機能があるが、そのワーキングメモリ機能に介入する新たな手法としてfNIRSを使ってリアルタイムに個人の脳活動を測定し、ワーキングメモリが内在する両側背外側前頭前野活動を賦活するよう誘導するニューロフィードバックを行う系を構築した。このようなリアルタイムニューロフィードバック系を用いて、当院に入院している片側上肢麻痺を持つ急性期脳卒中患者を対象として20名に実施した結果、ワーキングメモリ機能が高い個人ほど両側背側前頭前野活動が上昇する傾向が認められ(n=20、群間比較 p=0.072)、これらの研究成果を脳神経外科学会や脳卒中学会に報告した。
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