研究実績の概要 |
2019年度は、それまで実施してきた前向きコホートの継続と解析を進めた。 アウトカムに当初計画の健康寿命の喪失、医療入院だけでなく、全死亡を加えた。腎臓リハビリテーション戦略を確立するにあたり、身体機能の改善を目的とした集中的な個別介入、もしくは、日頃からの運動習慣の獲得を目標とした介入、のいずれが効果的かを検討した。 2017年度の検討においてサルコペニア・フレイルの患者は健康寿命(歩行能力)を喪失しやすいこと、2018年度の検討においてサルコペニアの背景には低栄養が関与し、そして、年代別に算出した身体機能の基準値より、高齢透析患者ほど身体機能の低下が著しいことを明らかにした。そして、サルコペニアやフレイルの改善には、個別的な身体機能低下に対する運動療法として、スローレジスタンストレーニングが効果的であることを論文として公表した(Moriyama Y, Hara M, Ishikawa H, Kono K, et al. 2019)。 それらの成果に加え、2019年度は新たに個別的な運動療法だけでなく、日頃から運動習慣が身についているかどうか、そして、日頃の歩行速度が全死亡に関連するかを検討した。その結果、運動習慣の有無、日頃の歩行速度が1.0km/秒を上回っているかどうかはいずれも死亡率に強く影響する要因であることが明らかとなった。つまり、サルコペニアやフレイルに陥りそれに対する身体機能改善を目的とした個別的な運動療法だけでなく、透析導入後、より早期の段階から運動習慣を獲得し、日頃の歩行速度を高く保つような日常生活活動に対する指導も腎臓リハビリテーション戦略として重要であることが示唆された。
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