研究課題/領域番号 |
17K13101
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
越地 福朗 東京工芸大学, 工学部, 准教授 (00610445)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ボディエリアネットワーク / ウェアラブル機器 / 共振結合 / 磁界 / コイル / アンテナ / 人体 / 生体安全性 |
研究実績の概要 |
本研究は,医療・ヘルスケアのためのボディエリア通信において,磁界励振型の送受信アンテナコイルを用いる生体周辺通信を,生体周囲のみならず生体内部へと拡張し,生体内外を通信エリアとするボディエリア通信へと発展させた際の信号伝送特性を,電磁気学的および電気回路理論的見地から,定性的,定量的に明らかにすることを目的とし,最終的には,送受信アンテナ間における生体内外の電磁界分布や伝送特性,電磁環境両立性を明らかにし,アンテナコイルの設計手法,アンテナコイルおよび生体を含めたシステム設計手法の確立を目指したものである. 平成29年度は,生体内外に近接配置されるアンテナの構造や形状に対する最適動作周波数(共振周波数)や,生体内外における伝送特性,また,アンテナが生体内外に形成する電磁界分布などの検討を行った. その結果,数値解析によって得られる電磁界分布から,コイル型アンテナを用いることで,非磁性である人体の影響を受けにくく,生体周囲のみならず,生体内においても効果的通信エリアが形成可能であることを明らかにした.また,送受信アンテナ同士が磁界によって効果的に結合するため,電極を利用する電界励振型のアンテナを用いる場合に比べて良好な伝送特性が得られることを明らかにした. さらに,上記結果をふまえて,コイル型アンテナを試作し,生体等価ファントムを用いて伝送特性の確認実験を行ったところ,電磁界解析結果と同様の傾向を示すことが確認され,本研究の有効性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は,生体内外に近接配置されるアンテナの構造や形状に対する動作周波数や,生体内外における伝送特性,また,アンテナが生体内外に形成する電磁界分布などの検討を行っている.数値電磁界解析による解析的検討と,試作アンテナと生体等価ファントムを用いた実測による実験的検討の両面から行っており,当初の研究計画どおり,順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
前年度の成果をふまえて,より具体的な検討を行っていく.インプランタブル機器やウェアラブル機器を身につけて生活することを考えると,日常生活において,様々な人体の姿勢変動が考えられる.こうした姿勢変動などに対する送受信アンテナ間の伝送特性変動や伝送周波数特性,電磁界分布などを検討する.さらに,本申請研究は,生体近傍および生体内外の通信を想定しており,アンテナも生体近傍や生体内に配置されるため,人体・生体の電磁波防護の観点から,アンテナや電子回路から放射される電磁波に対する生体安全性や電磁ノイズに対するイミュニティについても検討する必要がある.特に,生体安全性については,生体の電磁波エネルギー吸収率である局所Specific Absorption Rate (SAR) 値によって評価を行う.評価には,国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)によって定められた国際ガイドラインや総務省の定めるSAR制限値と照らし合わせて評価を実施し,生体安全性の確認を行う.これらの検討についても,すでに所有している電磁界解析ソフトウェア(現有設備)やネットワークアナライザ(現有設備),誘電体プローブ(現有設備)によって行う.また,必要に応じて,研究協力先である東京大学や東京理科大学の研究設備なども利用して行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
計画立案時に予定していた国際会議の日程が,他の会議の依頼講演の日程と重なり,出張を見送ったことと,計画立案時に購入を予定していた物品の一部に価格の変化があり,購入を見送ったためである.これらについては,平成30年度に開催される同分野の国際会議における研究発表・情報収集のための出張旅費,および同等代替品の購入費用として利用する.
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