本研究では人の動きや生体電気信号など、複数の生体情報を常時モニタリング可能なウェアラブル装置の開発を目的としている。 平成29年度は、IPMC(Ion Polymer Metal composite)と呼ばれる高分子樹脂と金属の接合体表面の金メッキ層を利用した生体電気信号用の電極としての機能と、IPMCのモーションセンサ機能を組み合わせた複合型センサの作成と機能評価を行った。 幅20 mm、長さ50 mmに切り取ったIPMCをスポーツ用サポーターに組み込み、これを手首関節に取り付け、手首の掌屈運動した時のIPMCの変形による起電力と心電図及び筋電図の同時計測を行った結果、この複合型センサは、一つの素子で人の動きと複数の生体電気信号を同時に計測が可能であり、その形状から衣服等に組み込むウェアラブルな計測装置用のセンサ素子としての実用性が示された。 平成30年度は、衣類に編み込む事が可能なセンサ素子を得るため、幅を1 mm程度の繊維状に裁断したIPMCを布に編み込んだ生体情報モニタリング装置を作成し、繊維状のIPMCセンサの運動用センサと生体電気信号用電極としての実用性の検討を行った。繊維状のIPMCセンサは人体の動きの計測に関しては角変位にほぼ比例する結果が得られた。生体電気信号用電極心電図計測の結果は、生体電気信号用ペーストを用いて人体と接触させた場合には、生体電気信号用電極として良好な波形が得られたが、ペーストなしで計測した場合にはノイズが多く、R波の判別が可能な程度であった。これは生体と電極との接触インピーダンスが非常に大きいためであり、生体との結合方法が今後の課題である。
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