研究課題/領域番号 |
17K13107
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研究機関 | 川崎医療福祉大学 |
研究代表者 |
小原 謙一 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 准教授 (10412256)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 臀部ずれ力 / 背もたれ / シートカバー / タイミング |
研究実績の概要 |
リクライニング式車椅子の背もたれ傾斜中に、車椅子の座面および背もたれと身体との間には、相対的な位置のずれが生じる。このずれは、背もたれ傾斜中における臀部ずれ力の増減の一つの要因になり得る(Kobara et al., Prosthet Orthot Int 2013)。平成29年度では健常者を対象として、車椅子の背もたれを傾斜させる際に起こる車椅子と身体の位置のずれのタイミングを分析し、どの角度で身体がずれ始め、臀部ずれ力が増大するのかを調べることで、背もたれが機能を発揮すべき角度を明確にする目的で実験を実施した。 実験条件は、リクライニング式車椅子上での姿勢の崩れを想定し、臀部と背もたれとの距離3cm、6cm、9cmの3条件とした。背もたれ後傾40度から後傾10度まで起こしていく際の臀部ずれ力(背もたれ後傾位期、体幹ずれ直前期、背もたれ完了期)と、背もたれに対する体幹の相対的ずれが生じる際の背もたれ後傾角度を測定した。 その結果、臀部位置にかかわらず体幹が上方へずれる直前に臀部ずれ力は背もたれ傾斜中で最大値を示し、その値およびその際の背もたれ角度は各条件間で有意差はなかった。 リクライニング車椅子上座位における臀部位置が前方であるほど、背もたれを起こしていく際の臀部ずれ力は急激に増大する(Kobara et al., Prosthet Orthot Int 2013).しかしながら、体幹を背もたれ上で滑りやすくすることで、体幹が滑る直前で臀部ずれ力は背もたれ傾斜中において最大値を示すものの、その増大をある程度抑制することができ、それは臀部位置には影響されなかった。このことから、シートカバーにより能動的に体幹を上方へ滑らせ、そのタイミングは背もたれが傾斜すると同時に始まることが、臀部ずれ力の変動を抑制し得ることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ、研究計画通りの進捗状況にはなっているが、背もたれ部の力を測定する機器を背もたれに装着する治具の詳細な仕様を詰めている段階であるため、その背もたれ力測定機器を使用した実験計画を進めることができない状況である。しかしながら、当該機器が使用できない場合での実験計画は進みつつあるため、現状では大きな問題にはならないと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度(30年度)は当初の計画通り脊柱後彎が背もたれ傾斜中における臀部ずれ力増大に及ぼす影響および特徴の解明を行う予定である。実験に必要な機器は背もたれにかかる力の測定機器を背もたれに装着するための治具以外はそろってきているため、納入が遅れる場合は圧力分布測定器にて代用することで実施する。 加えて、来年度(31年度)の計画である高齢者を対象とした検証実験の準備(協力施設との打ち合わせ、実験機器の整備)を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、背もたれにかかる力を測定する機器を背もたれに設置するための治具の詳細な仕様が決定していないので、その費用を残しているためである。 今年度の使用計画は、上述の当該治具が完成した際に、その費用を計上する予定である。また、11月に名古屋市で行われる第34回日本義肢装具学会学術大会で研究成果を発表する予定であるが、その際の旅費及び参加費を計上する。
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