本研究課題では平成29~30年度に、1. 背もたれ傾斜中の臀部ずれ力の変動を軽減させるためには、背もたれ傾斜に身体を積極的に早いタイミングで背もたれ上を滑らせる機能が必要である(「背もたれ傾斜中における臀部ずれ力の変動と背もたれ上での体幹の上方滑りのタイミングとの関係」(日本義肢装具学会誌35))ことと、2. 背張り調整によって背もたれ後傾時の臀部ずれ力は軽減し得るが、身体背部には不快感が生じる(「車椅子の背張り調整が背もたれ後傾時の臀部ずれ力、体幹の相対的ずれ幅および背もたれの使用感に及ぼす影響」(車椅子シーティング研究4)という成果を発表している。 令和元年度は上記の2つの成果をもとに背もたれ傾斜中の臀部ずれ力の変動軽減を目的としたシートカバーアセンブリを考案した。このシートカバーアセンブリは、背もたれの傾斜に応じて背もたれ面上にて身体を能動的に上下方向に移動させることを可能にした部品の集合体である。構成部品としては、伸縮ベルト、定滑車、動滑車、低摩擦および後摩擦シートである。このシートカバーアセンブリの臀部ずれ力軽減効果を車椅子使用高齢者を対象に検証した結果、シートカバーアセンブリを用いない条件では、背もたれ傾斜による臀部ずれ力の変動幅は-20~60%であったのに対し、シートカバーアセンブリを用いた場合、その幅は-1~20%と大幅に軽減された(投稿中)。 このシートカバーアセンブリを使用して能動的に身体を滑らせることにより、背もたれのみが傾斜するリクライニング中の臀部ずれ力の変動を軽減することが可能となり、褥瘡発生を軽減できるものと思われる。
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