破損・修理に対する包括的な対処に役立てることを目的とし、①工学的試験評価の観点から下肢装具の類型化、②工学的試験評価に関連するユーザー特性の抽出、③典型的な破損・修理の事例、ユーザー特性データの集積を行って、④下肢装具とユーザー特性との関係性を可視化するマップを開発した。令和元年度は以下の研究を行った。 ③これまでに収集した破損事例368件について、種類毎に分析を行った。 シューホーン型下肢装具は166件、両側支柱付き金属製下肢装具は122件、その他80件であった。装具の種類別に破損修理内容を見ると、プラスチック本体の破損に関しては、シューホーンブレースが96件中14件(15%)、踵部穴開きのシューホーンブレースが32件中10件(31%)、TIRRが7件中2件(29%)、オルトップが20件中0件(0%)であり、剛性が低いオルトップでは、本体破損がないこと、また、コルゲーションなど、強度向上の加工がなされていても、踵部穴開きのシューホーンブレースやTIRR等、穴あけ加工がある装具では、本体破損が生じやすい傾向があることが示唆された。 ④シューホーン型下肢装具、両側支柱付き金属製下肢装具について、破損の種類ごとに、ユーザー特性(体重、使用期間、活動度、年齢等)との関係を分析し、下肢装具とユーザー特性との関係性を可視化するマップを作成した。マップから、シューホーンブレースに関しては、耐用年数内の破損は少ないものの、他の穴あき加工がある装具は耐用年数内でも破損が生じている状況等が明らかとなり、現在、一括で設定されている耐用年数について、種類ごとに精査する必要性等が示唆された。 以上のように、装具の特性やユーザーの特性との関係を詳細に分析していくことで、破損修理対策の参考となる基礎的な知見が得られた。
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