本研究は、立位バランス調節システム及び循環調節システムの両調節システムが、静的二足立位時には、連関・協働している可能性とそのメカニズムを検討した。 最終年度は、前年度に実施した直立姿勢における他動的筋収縮実験について分析を行った。人工的な身体動揺抑制時に、リズミカルな下腿筋収縮活動を電気刺激にて誘発し、その際の循環応答を解析した結果、下腿筋活動の強度が通常静的立位時の発揮レベル以下である場合、循環応答に変化は生じなかった。この結果は、静的立位時の下腿筋活動のみでは血液循環へ十分な効果を及ぼさない可能性、そして自発的に生じる身体動揺自体も循環調節に重要な役割を担う可能性を示唆する結果であった。そこで、新たな実験として、身体動揺の有無による循環応答の比較を行った。健常若年者に対して、随意的に身体動揺を抑制する両脚立位条件(Still条件)を行った結果、通常静的立位時に比べStill条件時は、下腿筋活動量は変化しないものの、身体動揺の減少と循環応答の変化が認められた。従って、身体動揺そのものも循環調節への貢献に重要であることを示唆する結果となった。 これら一連の研究は、前年度までの研究成果と合わせて、両調節システム関連の存在可能性、さらにその生理学的意義を支持するものである。また、そのメカニズムを明らかにする上で重要な基礎的知見を与えるものである。一方で、両調節システムが関連するモデルを作成するためには、さらに詳細な実験的検討が必要であることも明らかとなった。
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