研究課題
「できなかった」ことが「できる様になる」過程で,“行動の学習・実行を担う特定の神経回路が異なる神経回路へシフトすること”が示唆されているが,どのような生理学的メカニズムにより達成されるか殆ど分かっていない。本研究では学習過程において“柔軟な意思決定が可能な目標指向性行動”から“意思決定が固定化される習慣行動”へ行動が変化する習慣形成の獲得に注目し、その際に全脳レベルで生じる神経回路シフトがどのように生じるか明らかにした。申請者は,平成29年度までの小動物脳機能イメージング研究にて、トレーニングに伴いラットの行動が習慣化される過程で、複数の脳領域の糖代謝(脳活動)が時空間的にダイナミックに変化することを明らかにした。平成30年度は、前述した脳領域の中でも特に強く活動した神経核にターゲットを絞り、薬理学的な局所破壊実験を行った。その結果、破壊群では、単一レバー押し課題の訓練初期の目標指向性行動は正常であったが、継続した際に生じる習慣行動の獲得が阻害されることが明らかになった。一方で、対照群と破壊群の単純なレバー押し行動の実行や獲得の間に差は認められなかった。また、破壊領域を免疫組織化学法により精確に同定した。本研究成果は、習慣形成の過程で生じる神経回路シフトメカニズムの解明に貢献すると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
平成30年度は、薬理学的手法を用いて局所脳領域破を破壊し、行動の習慣化への影響を調べた。簡潔には平成29年度までに実施した小動物脳機能イメージング法を用いた実験にて発見した習慣形成と相関関係にある脳部位を薬理学的に慢性破壊し、学習行動への影響を解析した。その結果、事前の研究にて発見した脳領域が習慣行動の獲得と因果関係を有することを突き止めた。
これまでの研究で、小動物脳機能イメージング法により特定した脳領域と習慣行動の因果関係を証明した。平成31年度は、これまでの研究で得られた野生型動物の行動実験の結果を詳細な追加解析を実施し、習慣形成が行動学的レベルでどのように生じるかを明らかにする。習慣形成に関与する行動指標が明らかとなった場合、対照群と介入群における行動学的変化の差を明らかにし、これまでの研究で特定した脳領域の機能的役割を明らかする。
実験動物の維持費、消耗品購入費用に充てる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Molecular Brain
巻: 12 ページ: 1-12
https://doi.org/10.1186/s13041-019-0431-x
バイオメカニクス研究
巻: 22 ページ: 65-72