水温30℃への浸水前における入浴時間の違いと入浴水温の違いが浸水時の動脈スティフネスに及ぼす影響について検討した。 入浴時間の違い:健康な成人男性を対象とし、入浴なし浸水条件(コントロール条件)、浸水前入浴1分条件(1分条件)、3分条件、5分条件および入浴10分条件の5条件を実施した。陸上安静後、各条件時間の入浴(水温:40℃)を行った。その後、簡易水槽(水温:30℃)を用いて15分間の浸水を行った。測定項目は、心-頸動脈間脈波伝播速度(hcPWV)、心-大腿動脈間PWV(hfPWV)、大腿-足首動脈間PWV(faPWV)、上腕-足首間PWV(baPWV)、心拍数、血圧、直腸温、皮膚温および皮膚血流量とした。5分条件および10分条件における入浴時の皮膚温は、コントロール条件と比較して、有意に高値を示した(P<0.05)。このことから、入浴に伴う温熱刺激が身体に加わっていたものと推測する。浸水時の皮膚温は、10分条件のみコントロール条件と比較して有意な差が観察された(P<0.05)。浸水時の各PWVは、条件間に有意な差は観察されなかった。 温熱刺激温度(水温)の違い:入浴なし浸水条件(コントロール条件)、浸水前水温25℃入浴条件(25℃条件)、30℃条件、35℃条件および40℃条件の5条件を実施した。実験プロトコルおよび測定項目は、上述と同様とした。入浴時および浸水時における10分条件の皮膚温は、コントロール条件と比較して有意に高値を示した。浸水時の各PWVは、条件間に有意な差は観察されなかった。 両実験において条件間における浸水時のPWVに有意な差が観察されなかったことから、入浴なし浸水条件と同様の変化であり、PWVへの影響は、入浴での温熱刺激よりも浸水に伴う冷刺激が大きい可能性が考えられた。
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