研究課題/領域番号 |
17K13117
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
安部 久貴 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (40634556)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 指導者 / 学習者 / 言葉がけ / 信頼関係 / 運動有能感 |
研究実績の概要 |
本研究は、指導者の言葉がけが学習者と指導者の親和的信頼関係を介して、学習者の運動有能感の向上に作用するメカニズムについて明らかにすることを目的としている。 その中で今年度は、学習者の認知する指導者からの言葉がけに影響を与える要因について検討した。調査対象者は、あるサッカージュニアユースクラブの選手15名であった。指導者の「言葉がけ」の認知に及ぼす選手の自己概念の影響について検討するために、サッカーに関する有能感尺度を用いて選手の自己概念を評価した上で、有能感水準の異なる3群間の指導者の「言葉がけ」に対する認知の差異について検討した。 その結果、サッカーに関する有能感水準の異なる3群間において、選手が認知する「言葉がけ」の頻度に有意差は認めなかったことから、選手が指導者からの「言葉がけ」を認知する際に影響を与える要因として、選手が有する自己概念以外の要因が強く影響を与えていた可能性があることが明らかになった。そこで、より詳細に指導者の「言葉がけ」に対する認知の差異について検討したところ、プレーとは無関係な声かけを指導者から受けた場合に、サッカー有能感の高い選手が低い選手よりも指導者からの受容感を強く認識していたことが明らかになった。指導者からの受容感の認識は、指導者と選手の間での指導―被指導関係成立に重要な要因であると想定されていることから、高有能感群の選手と指導者の間には、指導―被指導関係が成立していたと推察される。 以上より、指導―被指導関係の成立、つまりは、指導者―学習者間の肯定的な信頼関係の形成は、学習者による指導者からの「言葉がけ」の認知に影響を与える可能性があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は、実際のサッカー指導場面を記録・分析し、指導者の学習者に対する言葉がけを縦断的に調査する予定であった。しかしながら、当初予定していた指導者が異動になってしまい、調査対象者を選定しなおすのに時間がかかってしまったため、縦断調査に取り掛かるのが遅れてしまったため、進捗状況は「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、縦断的調査を実施することにより、指導者の言葉がけが学習者との親和的信頼関係構築に与える影響について検討すると同時に、親和的信頼関係の構築が学習者の認知する指導者からの言葉がけに与える影響について検討する。 さらに、本研究の最終目的である指導者の言葉がけが、学習者と指導者の親和的信頼関係を介して学習者の運動有能感の向上に作用するメカニズムについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、実際のサッカー指導場面を記録・分析し、指導者の学習者に対する言葉がけを縦断的に調査する予定であった。しかしながら、当初予定していた指導者が異動になってしまい、調査対象者を選定しなおすのに時間がかかってしまったため、縦断調査に取り掛かるのが遅れてしまった。そのため、調査や分析用に予定していた人件費や謝金分が次年度使用額として生じてしまった。また、昨年度は研究成果発表として日本体育学会への参加を予定していたが、荒天のため取りやめたことも次年度使用額が生じた理由である。
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