大きく2点の実績がある. 1点目は,他者への共感の育成に向けた体育授業の可能性を探ることを目的とした研究である.この研究では小学校1年生33人の算数科の授業における聴く行為と体育授業の鬼遊びにおける連携技能を検討した.対象とした鬼遊びは,守備者2人と攻撃者3人が対戦するゲームであった.教室授業における聴く行為は,2人の評価者がビデオ記録から児童の視線の方向と座位姿勢の安定を検討し,鬼遊びでは,失点の分析と事例的に守備者2人の連携技能を検討した.結果として,教室授業で聴く行為が良い児童が鬼遊びの守備者2人になった時は,鬼遊びで失点が少ないことを示された.事例からは,聴く行為が良い児童の守備者2人は,守備者の二者間距離を保って失点を防ぎ,一方で聴く行為が良くない2人は,仲間の鬼に注意が払われず,守備者の二者間距離を保つことができない傾向が見られた.これらの結果から,鬼遊びの課題の制約が連携技能を生み,体育授業における課題の制約が,体育授業だけではなく教室授業における他者と意図を共有するといった共感の育成にもつながることが示唆された. 2点目は,集団スポーツにおける運動中の行為から児童の協調性をアセスメントする視点を明らかにする研究である.小学校第4学年の児童を対象とし,まず対象児童を日常的に指導している教員3名が各児童の協調性を5段階で評価した(協調性点数).一方で集団スポーツは,個の力ではボールを運べない制約をしたゴール型ゲームを構想した.その結果,日常において協調性点数が低い児童は個人的技能によって学習課題の解決に向かう傾向にあり,他の攻撃者や守備者へ注意が向きにくいこと,高い児童は,仲間と学習課題を共有した上で他者との関係に注意を向けながら位置取りをしていることが明らかとなった.以上の結果から,集団スポーツ中の児童の行為から協調性を評価できることが示唆された.
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