研究課題/領域番号 |
17K13129
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研究機関 | 流通科学大学 |
研究代表者 |
関 和俊 流通科学大学, 人間社会学部, 准教授 (30552210)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 力発揮調節能 / 脊髄α運動ニューロン / 運動習慣 / 加齢 / F波出現頻度 |
研究実績の概要 |
力発揮調節能と脊髄の興奮性との関わりを検討することを目的とし、平成29年度は実験に先立ち倫理委員会の申請を実施した。つぎに、実験環境の構築および当初の実験計画の遂行の有無について検討を行った。力発揮課題は「握力」とし、握力の最大値の25%・50%・75%強度および100%強度にて20秒間の維持の課題設定にて実験を実施予定であったが、課題達成が難しい対象者が多く観察された。そのため、研究協力者との協議を重ね、握力の最大値の20%・40%・75%強度に変更を行った。 実験1:若年者を対象とした運動習慣の有無が力発揮調節能と誘発筋電図F波に及ぼす影響について検討を行った。各目標筋力(20秒間維持)に対して、運動習慣有群は20%強度 99.2±2.0%、40%強度 98.2±1.4%、60%強度 98.9±1.0%、運動習慣有無は20%強度 95.1±2.1%、40%強度 93.8±5.0%、60%強度 91.4±8.4%であった。各目標筋力に調整する能力は、運動習慣有群が無群と比べて優れていた。また、脊髄α運動ニューロンの興奮性の指標として用いた誘発筋電図 F 波の出現頻度は、運動習慣有群は20%強度 26.0±18.2%、40%強度 46.0±11.9%、60%強度 44.0±22.2%、運動習慣有無は20%強度 57.5±27.5%、40%強度 62.5±25.3%、60%強度 85.0±14.7%であった。各目標筋力発揮調整時のF波出現頻度は、各条件ともに運動習慣無群が有群と比して多かった。また、運動習慣有・無群ともに目標筋力が増大に応じて、F波出現頻度も増大した。 以上のことから、運動習慣が無い者は20秒間の各目標筋力に対する調整能力は劣ること、さらに調整能力は劣る一方で、脊髄α運動ニューロンの興奮性は各目標筋力に対して運動習慣が有る者より高いことが観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は、若年者を対象とした運動習慣の有無が力発揮調節能と誘発筋電図 F 波に及ぼす影響について検討を行った。測定項目は、誘発筋電図 F 波および力発揮調整能とした。F 波の刺激部位は正中神経(手根部)、被験筋は短母指外転筋(非掌握運動側)とした。運動課題は、20 秒間の掌握運動(利き手側)とし、コントロール(安静)・低(20%)・中(40%)・高(60%)・最大(100%) MVCの 5 条件を ランダムに測定を行った。 各目標筋力に調整する能力は、20%・40%・60%強度ともに運動習慣有群が無群と比べて優れていた。各目標筋力発揮調整時のF波出現頻度は、コントロール条件は、運動習慣有無ともに同様であった。コントロール条件以外の各条件ともに運動習慣無群が有群と比して多かった。運動習慣有群は、20%強度条件より40%強度が増大したものの、60%強度および100%強度は40%強度と同程度であった。運動習慣無群は目標筋力の増大に応じて、F波出現頻度が増大した。 以上のことから、若年者で運動習慣が無い者は、20秒間の各目標筋力に対する調整能力は、運動習慣有群より劣ることがわかった。しかしながら、調整能力は劣る一方で、脊髄α運動ニューロンの興奮性は各目標筋力に対して運動習慣が有る者より高いことが観察された。 現在、振幅F/M比は各神経筋単位の興奮度の状態を、潜時は運動単位の大きさを反映することから、誘発筋電図F波の解析項目を増やし、データを詳細に検討している。 当初の計画では、若年者を対象とし、実験2:力増減時の誘発筋電図F波の変化(漸増・漸減負荷実験)に進んでいる段階であるが、実験2を遂行できていない。実験環境整備や実験条件の検討に時間を要したのが原因である。実験対象者には実験協力依頼は済んでおり、適時実験を遂行していく。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、若年者の実験2:力増減時の誘発筋電図F波の変化(漸増・漸減負荷実験)、実験3:力調整時の誘発筋電図 F 波の変化(力増大・力減少負荷実験)を実施する。また、平成30、31年度をかけて、加齢差についても検討を行う為、高齢者へ実験依頼を実施していく。 実験2は、対象者、測定項目、刺激部位、被験筋は実験1と同様とする。運動課題は目標とする%MVCまで20秒間で達する様に徐々に力を入れ、目標筋力達成後 20秒間で力を抜く掌握運動(利き手)、測定条件:低(20%)・中(40%)・高(60%)・最大(100%)MVC の 4 条件をランダムに測定を行う。力調整能の評価は、目標とする%MVC 用の三角波に合わせて力の増減を行い、その三角波に対する実際の筋張力の絶対誤差、相対誤差から評価を行う。実験3は、対象者、測定項目、刺激部位、被験筋は実験1と同様とする。測定条件は、以下の4通り(力増大2通り、力減少2通り)とし、ランダムに実施する。力増大条件2通り:低(20%)強度掌握時から、1中(50%)・2高(60%)強度。力減少条件2通り:高(60%)強度掌握時から、3中(40%)・4低(20%)強度とする。ベースラインとする% MVCは20秒間、各目標張力の%MVCは20秒間の掌握運動を実施する。実験2および実験3ともに、実験1と同様に実験環境整備や実験条件の検討をすでに行っており、随時実験可能である。 得られた結果を学会発表および学術雑誌に論文投稿を行い、学術的な評価を受ける。
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