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2017 年度 実施状況報告書

人類学的手法を用いた武術思想の実践的研究:新陰流を事例にして

研究課題

研究課題/領域番号 17K13133
研究機関茨城大学

研究代表者

中嶋 哲也  茨城大学, 教育学部, 准教授 (30613921)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード刀法 / 砕き / 非切り / 型
研究実績の概要

本年度は流派武術のなかで武道伝書がどう読まれるのかを検討するため、まず道場での稽古の実態を詳細に検討した。これが分からなければ、当該流派の担い手たちの武道伝書の読み方に関する基本的な前提が判明しないからだ。
結果として、我々が通常、認識している形の稽古の在り様とはいささか異なる実践がなされていることが明らかとなった。例えば研究代表者が調査した流派は新陰流であるが、この流派では「非切り」、「砕き」といった稽古をしていた。これらの稽古は通常、定められた手順に従って行われると考えられる形の稽古とは異なり、非切りはこちらの太刀筋が甘ければ反撃してくる稽古であり、砕きは相手もある程度自由に動きながら、互いに勝負の主客が替わり得るような勝負性のある稽古であった。
こうした稽古が競技にならないのは刀法と呼ばれる太刀の相対の角度を追求する態度が根本にあるためである。これは競技試合の審判規定のような約束事ではなく、相手との相対の中で物理学的(数学的)に確かな太刀の角度を即興で繰り出すことを目的とした稽古である。こうした稽古の目的は勝敗ではなく太刀の角度を検証し、その経験知を積み重ねることにあるのだ。
こうした刀法と呼ばれる概念が調査地の実践を検討する上で重要になってくるが、調査を進めるうちに彼らが刀法を思考の枠組みとして用いている様子も見えてきた。つまり、「良い角度で太刀を振るにはどうすればよいのか?」という問いに毎回応えようと試行錯誤することが調査地の新陰流の稽古だったのである。今後、刀法という視点から彼らが伝書の記述をどう読解するのかが課題となる。ひとまず、彼らの稽古の日常から刀法という概念を引き出せたことが本年の成果といえるだろう。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成29年度では、新陰流における形の構造の研究に着手することを目的としていた。結果的に刀法という形の構造をなす概念を発見できたことは成果といえるだろう。また、当年度の研究実績としては平成30年3月26・27日の日本スポーツ人類学会第19回大会にて「源了圓の「型」論再考:新陰流の稽古法を事例にして」と題して研究発表した。当初は、『スポーツ人類学研究』に当該研究内容を投稿する予定であったが、結果としてはそこに至らず、研究発表留まりとなった。しかし、この研究発表の内容はいま論文化している最中であり、今年度内には投稿できる準備が整っている。

今後の研究の推進方策

平成30年度は稽古の習熟が流儀の思想の把握とどう連関しているのかを明らかにするものである。これに関連する議論を昨年10月に“Martial arts studies Journal(http://masjournal.org.uk/)”という海外学術ジャーナルに投稿し、現在、査読中である。いささか研究計画の順序が逆転してしまったが、この投稿中の論文は平成30年度の研究計画の一部しか達成しておらず、むしろ、平成29年度の課題とつながる実践知・身体知的な側面へのアプローチという側面が強い。平成30年度の課題は、改めて正面からとりくまなければならないのが現状である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 源了圓の「型」論再考: 新陰流の稽古法を事例にして2018

    • 著者名/発表者名
      中嶋哲也
    • 学会等名
      日本スポーツ人類学会第19回大会

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公開日: 2018-12-17  

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