最終年度となる本年度は、昨年度までの研究進捗状況を鑑み、実際にパラバドミントン競技者への予防アプローチやそのヒアリング調査およびフィードバック分析、コーチング現場での指導実践への活用方法についての検討を行った。 継続的に実施したことは、練習前後のウォーミングアップ・クーリングダウン時での疼痛発生の有無の確認や傷害発生の実態の記録、ならびに上半身の柔軟性確保のためのルーティーンメニューの実施である。 特に本年度は、オンコートでのパフォーマンス発揮における準備として、進行方向とは逆への抵抗に抗してのチェアワークを取り入れた。強度の高いウォーミングアップ項目を短時間でも採用することが、疼痛発生の減少やオンコートトレーニング前には重要であるとのフィードバックを得ることができた。本研究全体を通じて、以下の知見を得ることができた。 ・傷害・疼痛発生記録より、明らかに競技を中断せざるを得ない傷害を負う選手は少なかったものの、多くの選手が疼痛を抱えながら試合及び練習に臨んでいた。MRIによる傷害発生実態の検討より、車いす選手にて特徴的な肩関節の変調(無症候)が起こっている可能性が示唆された。 ・競技現場における課題として、傷害・疼痛発生予防のためのルーティーンメニューの確立が求められており、車いす選手・立位選手ともに肩関節の疼痛へのアプローチの必要性が挙げられた。肩関節の疼痛に関するスクリーニング項目として、肩関節3rdポジションにおける内旋可動域の継続的なチェックが挙げられ、練習前後での当該関節可動域の拡大が求められた。 ・国際レベルの車いす選手のゲーム分析より、1試合を通し1打あたり1.3秒のストロークテンポで7打程を平均的に行い続けることが示され、繰り返しの肩関節の疼痛を予防するための高強度・高負荷のウォーミングアップを取り入れる必要性が示された。
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