研究課題/領域番号 |
17K13135
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
國部 雅大 筑波大学, 体育系, 助教 (70707934)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 瞳孔径 / 両眼眼球運動 / 注意 / 注視 / 利き目 / 反応時間 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、運動準備時の注視状態が運動遂行とどのように関係するかについての実験を行い、実際の運動場面における運動準備方略について、注意集中の観点から総合的に検討することを目的とした。 研究初年度は、運動課題中の瞳孔径およびその変動に関して、眼球運動測定装置を用いて継時的に測定する実験を行った。大学生中距離ランナー10名を対象とし、3分のトレッドミル走行(最大酸素摂取量の約85%の運動強度、速度15.8±0.8km/h)を、5分間の休憩をはさみ計3回行った。運動前、前半90秒、後半90秒、運動直後の瞳孔径の中央値を算出した。その結果、走動作中には運動前および運動直後に比べて瞳孔径が約10%大きくなった。瞳孔径には走動作前半と後半とで有意な差はみられなかった。また、瞳孔径の変化に左右眼間の差はみられなかった。これらのことから、持久系の運動選手において、走動作中に瞳孔径が一過性に大きくなることが明らかになり、瞳孔径が運動時の覚醒水準を反映することが示唆された。 また本年度は、注視状態が反応の早さに与える影響に関して検討した実験研究の成果を海外学術雑誌に発表した。具体的には、注視位置を遠方にすることで、周辺視野に呈示された視覚刺激に対する早い反応が可能になること、および上視野は下視野に比べ、注視位置を近くすることによる反応時間の遅延が大きいことを示した。 さらに、大学女子バスケットボール選手を対象に、奥行き方向への注視移動を行う際の両眼眼球運動の潜時とシュート技能との関係を調べた実験研究の成果を発表した。開散眼球運動における非利き目の潜時が短い選手はスリーポイントシュート成功率が高いという結果が得られたことから、遠方の対象物に対して両眼を用いて素早く注視を移動することができる選手は高いシュートパフォーマンスを有することを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度は、運動課題中の瞳孔径を測定および分析するための実験環境を構築し、実験を遂行することができた。研究成果の発表に関して、本年度は計6件(筆頭3件、共著3件)の査読付論文を発表した。特に、注視距離と周辺視野反応時間の関係を明らかにした論文を海外学術雑誌に発表するとともに、両眼眼球運動とシュート技能の関係についての研究成果を発表した。また、注視方略や注意がパフォーマンスに与える影響に関する研究成果を共著で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究においては、様々な運動課題や反応時間課題中における瞳孔径変動を継時的に測定し、優れた運動遂行との関係を詳細に検討していく。また、両眼眼球運動と瞳孔径に関する指標間の相互関係を検討し、実際の運動場面で素早く的確な反応を行うために適した運動準備方略について、総合的な検討を行う。2年間の研究で得られた成果をまとめ、国内外の学術雑誌に投稿を行う予定をしている。
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