研究課題/領域番号 |
17K13137
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
中村 英仁 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (30700091)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | スポーツ・スポンサーシップ / 文化・制度的環境 / 比較分析 / Jリーグ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、スポンサーシップ契約にかかる関係性に、文化・制度的環境があたえる影響の程度を明らかにすることである。既存研究は当該契約関係をミクロ視点で捉え、良好な関係性の構築に必要なのは収益性や信頼性といった組織の内的要因だと理解してきた。しかしメゾ視点からみると、組織は業界や地域文化といった外的環境の中に生息しており、その影響から逃れられないはずであるが、こうした点について研究がなされていない。そこで本研究では、外的要因がスポンサーシップ関係に与える影響の程度を、事例分析により研究する。ただ、平成29年度には事例分析の前段階として、調査対象となるクラブの選定作業を行った。具体的には、日本、フランス、イギリスのプロサッカークラブ36組織のデータを収集・分析し、外的要因が強く働いている事例を探した。分析の結果、まず、スポンサー契約金額を増加させられるかはクラブの競技力という組織の内的要因であることが基本的な条件であることが確認された。この傾向は、日本のクラブにももちろん当てはまり、とくにフランスとイギリスのクラブで顕著であった。しかしそのような基本的条件の中、クラブの競技力が高くないにもかかわらず、契約金額を着実に増加させていたのが2つの日本のクラブであった。興味深いのが一方はいわゆる「親企業」が存在するクラブであり(外的要因が大きくスポンサーシップ契約に影響する可能性が高い)、もう一方は存在しないクラブである(外的要因が影響する可能性が低い)ということである。これら、フランスおよびイギリスの基本的条件に沿ったクラブと、この基本から外れる例外的クラブのスポンサーシップ契約プロセスを、平成30年度以降に比較することで、スポンサーシップ関係に外的要因がどのように影響するのかが明らかにできる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度には事例分析の前段階として、調査対象となるクラブの選定作業を行う計画であった。具体的には、日本、フランス、イギリス、ドイツのプロサッカークラブのデータを収集し、統計分析を実施したうえで、調査にふさわしい特徴的なクラブを絞り込むという計画であった。しかし、データ収集作業が難航してしまった。連携していた海外大学の研究者とともにデータ収集に取り組んだが、なかなか有用なデータを集めることができなかった。下期に入った際、ヨーロッパのクラブについて組織データを蓄積・販売する業者を発見したが、日本の組織および研究機関との契約が初めてということで契約交渉に時間がかかり、データ収集の完了が3月になってしまった。現在では分析を終え、遅れを若干の程度におさえることができた。またこうしたデータ収集作業における困難のため、当初計画していたレビュー論文の執筆もできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に絞り込んだ特徴的なクラブに対して、平成30年度においては定性分析を実施する。具体的には、雑誌・新聞記事の収集、またインタビュー調査を実施して、どのようなプロセスを経て、そしてどのような理由でスポンサーシップの契約額を増大させていったのか、これらクラブを比較検討する。また平成29年度に執筆することができなかったレビュー論文を完成させ、国内外のスポーツマネジメント研究雑誌に投稿する。
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