本研究の目的は、スポンサーシップ契約にかかる関係性に、文化・制度的環境があたえる影響の程度を明らかにすることである。既存研究は当該契約関係をミクロ視点で捉え、良好な関係性の構築に必要なのは収益性や信頼性といった組織の内的要因だと理解してきた。しかしメゾ視点からみると、組織は業界や地域文化といった外的環境の中に生息しており、その影響から逃れられないはずであるが、こうした点について研究がなされていない。そこで本研究では、定量および定性的分析を実施した。定量分析のために、国際的なサッカークラブとJクラブの会計データを収集した。定量分析では、ヨーロッパの会計会社と交渉し、サッカークラブの会計データを入手した。このデータ入手は日本で初めてのことであった。また定性分析のために、外的要因がスポンサーシップ関係に与える影響の程度をインタビュー調査により収集した。仲介者となってくれる人脈を活用しラポールを形成するという工夫をし、Jクラブのエグゼクティブ層にインタビュー調査を10件進めることができた。最終的に、このインタビュー調査と、これまで収集した公開データを分析にかけた。分析の結果、業界や地域文化といった外的要因にスポンサーシップ契約が影響を受けていることが明らかとなったとともに、そうした影響を回避するマネジメント方法についても明らかとなった。本研究の分析結果は、これまで問題と認識されていなかったメゾ要因がスポンサーシップ契約にあたえる影響を明らかにすること自体に意義があるとともに、その問題の解決方法に光を当てたことでスポーツスポンサーシップ契約研究の視野を広げることにつながるものである。
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