水中モーションキャプチャによる身体の3次元動作分析と、圧力分布計測による流体力分析を併用し、競泳の4泳法において手部で発揮される推進力の分析手法の構築を試みた。さらに、同様の方法を用い、クロールを対象として疲労による泳速度低下時の推進力や機械的パワーの変化を分析した。 その結果、競泳の4泳法を対象とした分析では、手部で発揮される推進力には泳者間で差が見られ、泳技能の低い泳者が高い推進力発揮をするケースや、泳技能の高い泳者が低い推進力発揮をするケースも見られた。泳動作では、泳者の身体に働く抵抗力と、泳者が発揮する推進力の差によって泳速度が決定すると考えられてきたが、本研究の結果はこの考えを支持するものとなり、より高い泳速度を達成するには高い推進力発揮だけでなく抵抗力の削減も重要であることが再確認された。 クロールを対象とした疲労による泳速度低下時の分析では、疲労によって泳速度が低下したとき、平均推進力や泳者が手部に働く機械的パワーが減少することが明らかとなった。また、ストローク動作1周期中に発揮する推進力の力積は疲労によって変化しないが、ストローク動作1周期に要する時間が長くなることが確認された。これらのことから、ストローク頻度の低下による平均推進力の低下が、疲労によって泳速度が低下する主な要因として考えられた。
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