研究課題/領域番号 |
17K13142
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研究機関 | 鹿屋体育大学 |
研究代表者 |
幾留 沙智 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 講師 (20724818)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自己調整学習 / 練習の質 / スポーツ / 熟達化 / Grit / 運動能力観 |
研究実績の概要 |
スポーツの熟達に質の高い練習は必要不可欠であるが、質の高い練習を促すことは容易ではない。そこで本研究では、スポーツ場面における質の高い練習を反映すると考えられている練習中の自己調整学習の程度に対して影響する個人特性及びスポーツの熟達に最も貢献する自己調整学習の特徴について検討を行うことを目的とした。 平成29年度までは、長期的な目標に対する粘り強さと情熱を意味するGrit、及び、運動能力に対して個人がもつ信念の違いである能力観に焦点を当て、自己調整学習に対する影響を検討してきた。その結果、Gritの下位因子である根気のみの強い影響が明らかとなった。しかし、能力観の影響については、質問紙を用いて調査する顕在的側面ではなく、潜在連合テストと呼ばれる反応時間課題を用いて調査する潜在的側面を対象とした場合には、より強い影響が示される可能性があると考えられる。これは、知能観に関する先行研究で、顕在指標と潜在指標の間に関連が見られないことや、顕在指標よりも潜在指標の方が実際の行動との関連を示すことが報告されていることから推察される。そこで平成30年度は、先行研究に倣い独自に作成した潜在連合テストを用いて測定した潜在的能力観が自己調整学習に与える影響について検討を行った。 77名の大学生競技者を対象として、自己調整学習尺度得点、Grit得点、顕在的能力観得点、及び、潜在的能力観得点を測定した。自己調整学習尺度得点を目的変数、その他を説明変数として、ステップワイズ法による重回帰分析を行った。その結果、根気のみが説明変数として選択された (R2 = .35、 p < .01)。またその影響は、潜在指標で測定した能力観が増大傾向であるほど大きくなる傾向がみられた。以上より、潜在的能力観であっても自己調整学習に対しては直接的な影響は与えておらず、最も重要な予測因子は根気であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究成果は、国内学会にて発表を行った。なお、これまでの総合的な研究成果に関して、国内学会での招待講演の機会を複数回いただくことができた。これは、本研究が体育・スポーツ領域に対して有意義な示唆を与える方向に向かって順調に進展していることを意味すると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、その他の性格特性と自己調整学習尺度得点との関連、及び、縦断データの分析を進めている。これらに加え、スポーツ現場に対して自己調整学習の知見がより活用されることを目指し、全国で広くデータを収集し、自己調整学習尺度の標準得点の算出に向けても準備を進めている段階である。
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