本研究の目的は、住み込み型フィールドワークから、持続的スポーツツーリズムが地域生活と共在関係を築くありようを描出することである。ここでいう持続的スポーツツーリズムとは「スポーツ専用空間」を新設することなく、地域空間を「そのまま」利用することで自然環境や地域生活を保全しつつ地域発展を志そうとする現代的なスポーツツーリズムを指す。しかし実際には、地域生活や生業の場である地域空間をスポーツ利用することは、「ここは何のための地域空間なのか」という新たな問題を現場に引き起こしている。 前科研では、「紛争」という視点から、持続的スポーツツーリズムをめぐる「軋轢」のメカニズムに迫った。だがそこでは同時に、「軋轢」を抱えつつも「共在」していく人々の日常的な生活実践の存在も浮かび上がってきた。後編となる本研究では「在地化」という視点から、人々の「共在」の論理に迫っている。 しかし、本年度も新型コロナ感染拡大防止の観点から、予定をしていた千葉県鴨川市での住み込み型フィールドワークを全て中止した。フィールドワークを実施できないため、研究内容を理論研究へと大幅に変更した。 個人化とグローバリゼーションが浸透した現代地域社会において、どのように持続的スポーツツーリズムを人々が地域生活に在地化させていくのかという問いに迫るために、村落社会学を中心に蓄積されてきたイエムラ論を批判的に再考した。イエムラ論を、その土地で生活し続ける英知に迫り描き出すための分析枠組みとして鍛え直すための理論的整理を中心的に実施した。その理論研究のなかで、人々が生活を守り・維持させるさまざまな互助協同の機能をもつ社会関係の錯綜をみる竹内利美の生活論に関心をよせた。竹内生活論を応用し、個人化の進んだ現代の村落社会の動態に注目するための方法論として「動的生活保障論」を考察した。
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