研究実績の概要 |
本研究はスポーツボランティアの中の代表的な活動のひとつである「スポーツ指導」を対象に,その価値を民間部門と比較可能な貨幣価値という形で示し,さらにスポーツ指導における新たな雇用創出可能性を検討することを目的としている.2017,2018年度は代替費用法(RCA)を用いて国内で提供されているボランティアスポーツ指導活動の貨幣価値推計を行ってきたが,2019年度はサービス享受者(スポーツ実施者)側の支払い意思(WTP)の把握を目的として調査を実施した. 調査は2020年3月にインターネット調査会社のモニターのうち,20~69歳の年1日以上運動・スポーツを実施した者である.サンプリングにあたっては国内のスポーツ実施者の性別・年代に沿って割付をおこなった.このうち,現在スポーツ指導を受けずに運動・スポーツを行っている者2,379名に対して,今後自身の望むレベル・技術を持った指導者からの指導が受けられるという仮想的状況を提示した上で1時間あたりいくらまでなら支払ってよいかをたずねた.WTPの回答形式は他の手法と比べバイアスが少ないとされスポーツ産業領域で複数の採用例がある二段階二肢選択方式を用いた. 分析の結果,「スポーツ指導者は必要ない」等の抵抗回答が全体の半数程度存在したがこれらは実施者の種目特性や志向によるものだと考えられる.また,対象者のうち37.7%が支払い意思があると回答し,WTPの中央値554円,平均値1,223円(最大提示額で裾切り)となった.このことから,現在スポーツ指導を受けていないスポーツ実施者においても,スポーツ指導に対する支払い意思は一定程度存在することが示され,支払い意思のある層の需要を喚起することでスポーツ指導市場において新たな雇用創出効果が創出できると考えられる. また,2017,2018年度の研究結果をもとに海外学会での口頭発表を行った.
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