研究課題/領域番号 |
17K13146
|
研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
伊藤 真紀 法政大学, スポーツ健康学部, 准教授 (10736507)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | パラリンピアン / トップアスリート / キャリア形成 / デュアルキャリア |
研究実績の概要 |
スポーツ界においてアスリートの人生は競技成績だけでなく、キャリアの視点も重要である。健常アスリートについては研究が先行し、キャリアプログラムが多く提示されている。一方で、 パラリンピアンについてはキャリア構築の初期過程から不明点が多い。パラリンピアンのキャリア支援は、障害者雇用・今後の障害者競技スポーツ振興に重要な役割を果たすと期待される。パラリンピアンに関するキャリア研究は、職業、雇用形態、競技に対する資金援助等に関する調査と限定的で、そのキャリア構築に直結する実践的な提言は少ない。他のトップアスリートと比較するとパラリンピアンの職業選択の過程には大きな違いが予想されるため、パラリンピアンを対象とする本研究は障害者雇用という観点からも意義があると考えられる。 本年度は、昨年度に引き続き現役パラリンピアン並びに引退したパラリンピアンに対する聞き取り調査(半構造化インタビュー調査)を行い、より探索的な質的データの収集を実施した。パラリンピアンをとりまく雇用状況の変化に関して行ったインタビュー調査により収集したデータを修正版グランデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて分析し、パラリンピアンのキャリア選択プロセスの特徴を明らかにした。その結果、キャリア選択時に影響を与えるポジティブ因子・ネガティブ因子を明らかにした。 インタビュー調査結果をもとに社会認知的進路理論(SCCT)を用いたアンケート調査を現役ならびに引退したパラリンピアンに実施し(1)自己効力感(特定の課題や行動をうまく遂行するために必要な能力に対する確信)、(2)結果期待感(特定の課題や行動の遂行による効果への期待や予測)、(3)目標設定(キャリアゴール)、(4)個人的・社会的要因(パラリンピアン独自の要因を追加する)を分析する事により、パラリンピアンが抱える内在的なキャリア問題を顕在化することを目的とした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に示した社会認知的進路理論(SCCT)を用いたアンケート調査実施に関しては、20代から60代の就業者422名(男性280名、女性142名)を対象にキャリアに関する予備調査を行い、職業、就業状況、自己効力感、結果期待、目標設定に関する質問項目等を精査した上で、本調査ではさらにパラリンピアン特有のキャリアに関する質問項目(個人的・社会的要因)の精査を行った。そのため、予備調査に時間がかかり本調査に十分時間を割くことが出来ず、アンケートの実施が遅れた。来年度も引き続きアンケート調査を実施し、量的データの分析を行い、成果をまとめる予定である。したがって、調査フレームの大枠は合意できる段階に達しており、計画の8 割は達成されたが、上記のような課題の積み残しもあるため、「おおむね順調」と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
令和元年度は、アンケート調査を引き続き行い、パラリンピアンがキャリア選択時に重要視する項目、キャリア選択時に影響を与える因子、阻害要因を明らかにする。男女のサンプルを用いて、それぞれの個人・社会的要因が、自己効力感、特定のキャリアへの興味、そしてキャリア探求行動へと影響を及ぼしていることを構造方程式モデリングにより確認する。研究のまとめとして、質的研究及び量的研究の成果を詳細に分析し、理論モデルの構築を目指し、障害のあるトップアスリートのキャリア構築に直結する実践的な提言を目指す。また、研究領域への還元として,関連する国内学会・国際学会での研究発表・研究論文の投稿を行い,成果の報告を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に予定していたアンケート調査が完了しておらず、配布・回収作業が継続中であるために、未使用額が生じた。来年度早々に引き続きアンケート調査を実施するための回収・分析に必要な郵送費およびデータ入力などの人件費費用を計上する。また、関連する国内学会・国際学会での研究発表・研究論文の投稿を行い,成果の報告を行うため学会参加のための旅費、その他の経費(学会参加費等)を計上している。
|