本研究は、パラリンピアンにおけるキャリア構築の実態と、問題解決にむけて必要とされる支援の解明を目的とした。実態調査は社会認知的進路理論(SCCT)に基づき実施し、パラリンピアンのキャリア選択阻害要因を顕在化することで、 キャリアアップ及び競技力向上へ貢献することを目的とした。平成29年度並びに平成30年度は、パラリンピアンのキャリア選択の過程を明らかにすることを目標としてパラリンピアンのキャリア実態調査を行い、多くのパラリンピアンが抱えているキャリア選択時のポジティブ因子・ネガティブ因子を調査し、それらの因子がどのようにキャリア選択に影響を与えるかを検討することを目的とした。現役パラリンピアン並びに引退したパラリンピアンに対する半構造化インタビュー調査を行い、より探索的な質的データの収集を実施した。収集したデータは修正版グランデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて分析し、パラリンピアンのキャリア選択プロセスの特徴を明らかにした。その結果、キャリア選択時に影響を与えるポジティブ因子・ネガティブ因子を明らかにした。さらに、令和元年度は実態調査を踏まえ社会認知的進路理論(SCCT)を用いたアンケート調査を実施し、パラリンピアンが抱える内在的なキャリア問題を顕在化することを目的とし、インタビュー調査結果をもとに社会認知的進路理論(SCCT)を用いたアンケート調査を現役ならびに引退したパラリンピアンに実施し(1)自己効力感(特定の課題や行動をうまく遂行するために必要な能力に対する確信)、(2)結果期待感(特定の課題や行動の遂行による効果への期待や予測)、(3)目標設定(キャリアゴール)、(4)個人的・社会的要因(パラリンピアン独自の要因を追加する)を分析する事により、パラリンピアンが抱える内在的なキャリア問題を顕在化する結果が得られた。
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