研究実績の概要 |
これまでに謙虚さを測定する尺度は数多く測定されているが、日本人向けの最適な尺度は存在しない。2022年度は、謙虚さの捉え方に文化差があり得ること、それを実証した研究がないことを踏まえ、既存の尺度を用いて文化差を検討することとした。尺度は信頼性と妥当性のある自己報告式の尺度であるRelational Humility Scale(RHS; Davis et al., 2011)を利用することとした。日本語版の作成許可を原著者に依頼し、許可後、翻訳作業を実施した。次に、尺度の因子構造、他の変数との関連を検討するため、競技者を含めた日本とアメリカの大学生400名ずつを対象としたWeb調査を実施した。調査内容は、翻訳した尺度、パーソナリティ(Big Five、Dark Triad)、well-beingに関連する指標(主観的幸福感、協調的幸福感)、それに非認知能力(自尊感情、レジリエンス、グリット)であった。確認的因子分析の結果、RHSはアメリカと同じ因子構造であると考えられた。しかしながら、因子間の関係が異なり、尺度としての信頼性を保つことができていないことが示唆された。加えて、他の変数との関連を検討した結果、原版とは異なる可能性があることが示された。以上の結果から、謙虚さとHumilityには重なる部分があるものの、異なる側面があることが示唆された。その理由として、日本の場合、謙虚さに関連する控えめな態度が求められるのに対して、アメリカでは求められないこと、社会的望ましさの影響が考えられた。したがって、より日本人の慣習にあわせた謙虚さを測定するツールを検討する必要があるといえる。
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