研究課題/領域番号 |
17K13155
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
鈴木 崇人 神奈川大学, 人間科学研究科, 研究員 (20638960)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 筋シナジー / 筋電図 / 下腿三頭筋 / 大腿四頭筋 / 大臀筋 |
研究実績の概要 |
日常生活における多くの動作が多関節運動であり、多関節にわたる複数の筋を協調させることが重要であるが、その制御メカニズムは未だ十分に明らかではない。複数の筋が小規模なグループ(筋シナジー)にまとめられて制御されている、という筋シナジー仮説に基づく研究も数多く行われてきたが、他の運動制御に関する仮説との比較から筋シナジー仮説の優位性を検証することも求められていた。本研究は、他の運動制御に関する説と比較しながら、足底屈筋群の等尺性・等速性収縮時の筋活動を詳細に検討し、それと垂直跳び時の筋活動の解析を合わせることで共通の筋シナジーを抜き出し、筋シナジーとトレーニング効果の関係を明らかにすることを目的とする。本研究では足底屈筋群と膝伸展筋群を主な研究対象としているが、下腿三頭筋と膝伸展筋群を活動させた場合に股関節伸展筋群が不随意に活動してしまう場合があるため、等尺性収縮中の下腿三頭筋の活動に対する股関節伸展筋群の活動の影響を確認する実験を行っており、今年度も続けた。その結果として、足底屈筋群と股関節伸展筋群の同時収縮により、腓腹筋内側頭の活動が低下する傾向が確認できることは変わっていない。この筋活動は筋シナジー仮説からも説明できるが、股関節と膝関節と足関節の筋の活動の二乗和を最小にするように活動している可能性も示唆された。また、等速性収縮の下腿三頭筋の活動に対する膝関節伸展筋群の活動の影響を確認する実験と、下腿三頭筋の等尺性収縮中の筋活動を筋シナジー仮説と非制御多様体(Uncontrolled Manifold: UCM)仮説の観点から解析して説明力を比較する実験については、実験設定を修正した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響により、今年度はほぼ全ての期間で学生を被験者にすることを神奈川大学により禁止され、多くの期間で実験自体も禁止されたため、研究を進めることが困難であった。 特に動的随意運動では、足底屈筋群と膝関節伸展筋群以外の対象としていない股関節伸展筋群が不随意に活動してしまうことがあり、統制することが困難である。これまで明らかにした足底屈筋群と膝関節伸展筋群の関係と同様の関係が、足底屈筋群と股関節伸展筋群の組合せにおいても存在する可能性があった。そこで、等尺性収縮中の下腿三頭筋の活動に対する股関節伸展筋群の活動の影響を確認する実験を行い、30条件(足底屈強度10条件×股関節伸展強度3条件)において検討した。現段階では股関節伸展筋群の活動時には腓腹筋内側頭の活動が低下する可能性が示唆されている。股関節筋群の活動によって腓腹筋内側頭の活動が変化することは、股関節と足関節の筋の活動の二乗和を最小にするように筋制御が行われているという仮説では説明できないが、膝関節の筋の活動も含めれば説明が可能であることが明らかになった。この現象においては筋シナジー仮説に優位性はなかった。この研究は発表準備中であったが、一部データに不備を見つけ、データを追加している段階である。 等速性収縮の下腿三頭筋の活動に対する膝関節伸展筋群の活動の影響を確認する実験は、足関節が動くために足の固定が難しく、昨年度より足の固定方法の改良を続けた。 下腿三頭筋の等尺性収縮中の筋活動を筋シナジー仮説とUCM仮説の観点から解析して説明力を比較する実験では、モーションキャプチャーシステムのキャリブレーション方法を検討した。 以上のことから、遅れている、と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの影響が落ち着いてから実験を再開する。神奈川大学では学生の安全のために実験が許可される状況になっても学生を被験者にすることが禁止される可能性があり、被験者を学生以外から広く募集することも検討する。 等尺性収縮中の下腿三頭筋の活動に対する股関節伸展筋群の活動の影響を確認する実験は、若干名の被験者で実験を追加して、研究をまとめる。 等速性収縮中の下腿三頭筋の活動に対する膝伸展筋群の活動の影響を確認する実験は、条件通りに筋を随意で動かすことが被験者にとって難しいため、練習日を別に設けることを検討する。 下腿三頭筋の等尺性収縮中の筋活動を筋シナジー仮説とUCM仮説の観点から解析して説明力を比較する実験では被験者を固定するときの被験者の姿勢を再検討してから本実験を行う。 被験者が何度も参加する必要があるトレーニング実験は、新型コロナウイルスの影響が長引くことで困難な状態が続く可能性が高く、被験者の安全を考慮して実施を慎重に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響が落ち着くのを待ってから実験を再度行う必要があり、また今後の論文掲載料などを支払うことも考慮して、研究費を残すことにした。フォースプレートを固定する土台の費用や、実験謝金や英文校正費、論文掲載料に使用する。
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