日常生活における多くの動作が多関節運動であり、多関節にわたる複数の筋を協調させることが重要であるが、その制御メカニズムは未だ十分に明らかではない。複数の筋が小規模なグループ(筋シナジー)にまとめられて制御されている、という筋シナジー仮説に基づく研究も数多く行われてきたが、他の運動制御に関する仮説との比較から筋シナジー仮説の優位性を検証することも求められている。本研究は全体として、他の運動制御に関する説と比較しながら、足底屈筋群の等尺性・等速性収縮時の筋活動を詳細に検討し、筋シナジーとトレーニング効果の関係を明らかにすることを目的とする。 本研究では足底屈筋群と膝伸展筋群を主な研究対象としているが、下腿三頭筋と膝伸展筋群を活動させた場合に股関節伸展筋群が不随意に活動してしまう場合があるため、等尺性収縮中の下腿三頭筋の活動に対する股関節伸展筋群の活動の影響を確認する実験を行っているが、必要なデータの数が足りておらず今年度も続けた。しかし、研究代表者の異動によって新たな所属機関の倫理審査委員会での承認が必要になったが、2022年11月に申請したものの2023年3月30日まで承認されず、本実験を行うことができなかった。そのため、実験中の固定によって引き起こされる苦痛を緩和するための設定変更を試す予備実験を行うなどに活動が留まった。 また、一年目の等尺性収縮中の下腿三頭筋の活動に対する膝関節伸展筋群の活動の影響を確認する実験では、膝関節伸展筋群を可動域の限界まで伸展させているために外部には力を発生させていなかった。そこで、膝伸展角度を僅かに浅くした状態で膝伸展トルクも計測する実験を計画しており、逆動力学計算に必要な身体の特徴点の位置座標を動画からの画像解析によって取得する方法を検討した。
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