研究課題/領域番号 |
17K13156
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
奈良 梨央 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 助手 (70708148)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 背泳ぎ / スタート / 股関節角度 / 膝関節角度 |
研究実績の概要 |
背泳ぎスタートのパフォーマンス向上のために、2014年にFINAがバックストロークレッジを認可した。近年の先行研究において、バックストロークレッジを使用することにより、飛び出し角度が大きくなる(de Jesuk K et al., 2016)や指先が入水した時の飛距離を伸ばす(Barkwell and Dickey J., 2017)、大転子がより高い位置になる(Ikeda Y et al., 2016)といったことが示されてきた。さらに、研究代表者の研究では、膝関節が伸展し始めた時の股関節角度が5m通過時間と有意な相関関係があったことを報告したことから、より高いパフォーマンスのためには、膝関節伸展よりも先に股関節を伸展すべきということを示した。したがって、研究代表者は、より高いパフォーマンスを発揮するためには、選手ごとで膝関節の伸展には適切なタイミングが存在するという仮説を立てた。 本研究では、背泳ぎスタート中にバックストロークレッジを使用した場合の適切な膝関節伸展のタイミングが存在するかどうか評価することを目的とした。 13人の選手を対象として、膝関節の伸展が異なる以下の4つのスタートを行った。1) 膝関節伸展よりも前に股関節を伸展、2) 膝関節伸展より後に股関節を伸展、3) 膝関節と同時に股関節を伸展、4) 通常通り。スタート動作は水上で4台、水中で2台のカメラを使用し、モーションキャプチャーシステムを用いて記録した。サンプリング周波数は120Hzとした。膝が伸展し始めた時の股関節角度、重心の水平速度、股関節角速度、飛び出し角度を測定した。また、パフォーマンスの指標として5m通過時間を測定した。 結果、膝関節伸展のタイミングと重心の水平速度との間に逆U字型の関連性が見られた。 以上のことから、それぞれの選手は膝関節伸展の適切なタイミングが存在することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度に計画していた実験Ⅰについて、予定していた通りに実験がすべて終了した。よって、おおむね順調に進んでいると判断している。 本研究の実験試技において、股関節伸展と膝関節伸展のタイミングを意図的にずらす必要があったため、対象者に理解をしてもらいやすいよう映像で伝達するなどの工夫を行い、本実験でスムーズに測定に入れるよう取り組んだ。 また事前に予備実験を何度も重ねたため、本実験でも予定通りにすべて終えることができた。 すでに実験Ⅱに向けての計画も進んでおり、実験Ⅰの結果についても平成30年度の国際学会にエントリー済みである。
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今後の研究の推進方策 |
実験Ⅱでは、実験Ⅰから得られた情報をもとに、フィードバックシステムを開発していく予定である。 実験Ⅱは、普段からよくトレーニングを行っている全国大会出場レベルの大学競泳選手を対象に実験を行う。 股関節にゴニオメータ、大腿前面に振動刺激呈示装置を貼付する。股関節に貼付したゴニオメータの情報は、リアルタイムで取り込まれ、設定された角度に達した時に、振動刺激装置に信号を入力するシステムをMatLabを用いて作成する。この処理速度が極めて重要となるため、ハイスペックPCを用いて処理を行う。 振動刺激をトリガーとした膝関節伸展運動を実施するが、振動刺激から関節運動が開始されるまでには、少なくとも100ミリ秒の時間間隔が生じ、これは各対象者によって大きく異なる。すなわち、膝が伸展し始めた時に至適股関節角度に達する前に振動刺激を呈示する必要がある。そこで、本研究では、予め振動刺激による膝関節伸展反応時間を計測し、実験Ⅰで得られる股関節角速度との積で、振動刺激を呈示する股関節角度を決定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 水中角度振動刺激装置が、当初予定していた額よりも安く仕入れることが出来た。また、計画していた膝関節伸展の体性感覚反応時間測定の機材を今年度に購入しなかったため。 (使用計画) 繰り越し分は、次年度の国内学会の参加費や研究の打ち合わせのための旅費や機材購入に充てる予定。
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