研究課題/領域番号 |
17K13160
|
研究機関 | 福井工業大学 |
研究代表者 |
辻本 典央 福井工業大学, スポーツ健康科学部, 講師 (20757520)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ランニング / 後足部外反 / モーメント / 過使用障害 / 足圧分布 |
研究実績の概要 |
ランニング障害の一要因に、後足部外反モーメント(足部を外反させる力)が挙げられる。この後足部外反モーメントにより過度の外反動作が生じることがあり、その動作によって足部や下肢の障害に繋がると考えられる。 後足部外反モーメントの大きさを評価するためには、床反力計やモーションキャプチャシステムなど高価な機器を用いて、実際のランニング動作を測定する必要がある。しかし、臨床現場などではそのような環境が整っていないのが現状である。また、これらの機器は可搬性に乏しく、現場に機器を運び入れて測定することも難しい。そこで、本研究の目的は、ランニング中の後足部外反モーメントを簡易的に評価する手法を確立し、ランニング障害予防のためのスクリーニングなどへの有益な情報を得ることとした。 今年度は、床反力計やモーションキャプチャによって得られたデータを用い、後足部外反モーメントを簡易的に評価できる変数を探索的に検証した。その結果、足関節中心に対する足圧中心の側方距離(Lankcop)が重要な変数であることが分かった。単回帰分析の結果、荷重局面(支持期の10%~床反力の垂直成分が最大になるまで)における後足部外反モーメントの角力積の大きさを、その局面のLankcopの大きさによって説明できることが分かり、説明率は後足部接地のランナーで70.6%、後足部接地以外のランナーで90.3%であった。さらに、後足部接地のランナーでは、Lankcopに加え、接地の瞬間から荷重局面までの足関節中心の側方変位(Dank)を加えた重回帰分析を行うと、説明率は82.8%となり、より高い精度で後足部外反モーメントの角力積を説明できることが明らかとなった。 これにより、後足部接地、後足部接地以外のランナーともに、ランニング支持期中の足関節中心と足圧中心のデータを用いることで後足部外反モーメントを予測できることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を遂行するためには大きく3つのステップがある。1つ目は、ランニング中の後足部外反モーメントを予測できる変数を見出すこと。2つ目は、その変数を簡易的に測定するためのシステムを確立すること。3つ目はその確立したシステムの信頼性を検証することである。 1年目において、ランニング中の後足部外反モーメントは、足関節中心に対する足圧中心の側方距離(Lankcop)、および、接地の瞬間から荷重局面に至るまでの足関節中心の側方変位(Dank)によって予測できることを明らかにした。さらに、その変数のうち、Lankcopについては、立位時の足部長軸に対する足関節中心の側方距離と、ランニング中の足圧中心データを組み合わせた値を用いることによって、ほぼ同等の値を得ることができることも明らかにした。これにより、映像を用いてランニング中の足関節中心の動きを追うという、データ取得に最も手間がかかる過程を省くことができ、より簡易的に後足部外反モーメントを評価する手法に近づいた。今後残されているのは、足関節中心の変位であるDankを、ランニング中の映像などを用いなくても評価できる手法を確立することである。これが確立されれば、簡易的にモーメントを評価するシステムの完成に大きく近づく。この評価システムが完成した後、そのシステムを用いて実際に後足部外反モーメントを評価し、その値がどれ程の信頼性があるのかを確認する段階に入っていく予定である。 これらのことから、現段階において3つのステップのうち、2つ目のステップの半ばまで進んでいる。従って、研究はおおむね順調に推移しているものと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの結果より、後足部外反モーメントは立位時の足関節中心の情報と、ランニング時の足圧中心データの組み合わせにより推定できる可能性が示唆された。これを踏まえると、立位時の足関節中心の情報をあらかじめ取得しておけば、あとのランニング時の足圧中心データは、可搬性に富む足圧分布測定器を用いて取得することができるため、場所を選ばず何処でも後足部外反モーメントの簡易的評価が可能になると考えられる。 この評価方法の信頼性を検証するために、今後の研究としては、実際に、足圧分布測定器等を用いて測定される後足部外反モーメントの推定値と、後足部外反モーメントの真値(床反力計とモーションキャプチャにて得られる値)を同時に測定し、その値の比較を行う必要がある。このためには、実際に床反力計の上に足圧分布測定器を設置し、その上を走り抜ける際の足部データと力学的データを取得する必要がある。足圧分布測定器については1年目の予算にて購入し、操作方法や扱える変数について検証済みである。簡易的評価手法が確立次第、信頼性の検証に入っていく予定である。 また、学会等で本研究結果を発表していく中で、ランニング障害をより包括的に捉えるためには、後足部外反モーメント(動きを生み出す要因)の評価とともに、後足部外反角度(実際に動いた結果)の双方を評価する必要があるという意見も受けた。この角度を実際に測定する際は、やはり映像を用いてランニング中の足部の動きを追う必要があるが、これを簡易的に評価する手法についても加えて検討している。ランニング中の後足部外反モーメントと角度の双方を簡易的に評価できる手法が確立されれば、ランニング障害予防に関する知見がより広がると考え、今後の研究を進めていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
必要に応じて研究費を執行した結果、次年度使用額が生じた。来年度はこの使用額を含め予定通り計画を実行していく。
|