ランニング支持期中に発生する後足部外反モーメント(後足部を外反方向に動かす力)は、その力が過度に大きくなると、下肢慢性障害に繋がると考えられている。そのため、後足部外反モーメントの測定は、下肢慢性障害のリスク評価として重要である。しかし、モーメントの測定には実験室内に埋設された床反力計が必要である。場所を選ばず多くの人を対象に評価を行うためには、床反力計を用いずにモーメントを測定(推定)する手法が必要となる。 これまでの我々の研究において、後足部外反モーメントの大きさは、床反力計を用いて算出される「足関節中心と足圧中心(COP)の側方距離(Lankcop)」によって、高い精度で推定できることが分かっている。これを受け、最終年度は、場所を選ばず測定できる足圧分布測定器を用いて算出されるLankcopによって、床反力計を用いて算出されるLankcopと同等の評価ができることの証明を目的とした。これを証明するためには、足関節中心座標が算出される空間座標系、COP座標が算出される足圧分布測定器内および床反力計内の座標系を全て合わせた状態で得られる両機器のCOP座標データの間に高い一致度が示される必要がある。 本研究では、床反力計の上に足圧分布測定器を載せた状態で、上述した全ての座標系が合うよう機器内の設定を行い、機器の上を被験者が複数回走り抜けるという実験を行った。その後、取得された両機器のCOP座標データ(後足部外反モーメントが主に発生する支持期10%~60%での平均値)を試技毎に算出し、関係性について分析した。その結果、両機器で得られたCOP座標データの間には、左右方向にて寄与率98.9%、前後方向にて寄与率97.7%という関係性が得られた。このことから、可搬性に富む足圧分布測定器を用いて算出されるLankcopによって後足部外反モーメントを推定できる可能性が示唆された。
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