全身運動における身体的な「不器用さ」は、縄跳びが出来ないや球技が苦手であるなど、遂行しようとする運動の可否によって評価されることが多いが、具体的に運動に関わるどのような能力の不足が、正確な運動遂行の達成を阻害しているかについては不明な点が多い。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果としては、まず、素早い力発揮能力の変化や違いの原因を検討するために、基礎実験を行った結果、素早い力発揮能力の指標であるRFD-SFは、末梢的な筋機能の増加をRFD-SFのy切片の増加として反映することが示唆された。次に、投・跳・打・蹴などの運動を円滑・正確に遂行する為に必要な、「素早い力発揮」に着目し、素早い力発揮能力の正確性についての検討を行った。特に、右手のみ、左手のみ、両手同時での素早い握力発揮の違いを検討した結果、目標筋力と発揮された筋力の誤差は、両手同時の素早い力発揮において、一側単独よりも大きい傾向が認められた。また、これには、運動の得意不得意が関係する可能性が示唆された。さらに、最終年度では、一般成人の全身運動における身体的な「不器用さ」を評価するために用いられる指標の比較のための調査を行った。指標の比較として大学生版運動不振尺度と、大人の発達障害に関する運動の基礎調査アンケートを実施した。その結果、両アンケートにはある程度の関係性がある事が認められた。これらの結果から、身体的な「不器用さ」を評価するための指標として両アンケートは有用であると考えられる
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