泳運動中は常に水圧が胸部にかかっていることや、ストロークに合わせた呼吸が求められることによる呼吸のタイミングの制約が多いことから、陸上運動と比較して呼吸筋への負荷が大きい。したがって、泳運動後に呼吸筋が疲労すると報告されている。呼吸筋への疲労を軽減することは、泳運動パフォーマンスの改善に貢献するかもしれない。本研究では、陸上運動と比較して呼吸筋への負担が大きい泳運動に着目し、競泳選手の運動パフォーマンス向上に貢献する呼吸筋のトレーニングの方法を明らかにすることを目的として研究を行っている。 今年度は、エリート競泳選手を30名対象として高強度な呼吸筋力トレーニングが泳パフォーマンスに及ぼす影響について、論文を執筆し投稿した。具体的な内容は、最大吸気口腔内圧の50%強度と75%強度で、1日30呼吸を2セッション、1週間に6セッション、6週間の呼吸筋力トレーニングを実施した。呼吸筋力トレーニング実施期間の前後で最大吸気口腔内圧の測定と泳パフォーマンステストを実施した。どちらの条件でも6週間の呼吸筋力トレーニングで最大吸気口腔内圧が向上し、呼吸制限をつけた条件での泳パフォーマンスが向上した。呼吸筋力トレーニングは、泳運動中の呼吸困難感を軽減し、泳パフォーマンス向上につながる可能性を示唆した。 また、泳パフォーマンス向上に対して最適な呼吸筋持久力トレーニングプロトコルを検討するために実験を実施したが、コロナ禍で十分に実施することが困難であった。
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