研究課題
本研究の目的は、単一の防水型慣性センサおよび深層学習(ディープラーニング)を活用して、競泳遂行時のパフォーマンスを定量化するシステム、アルゴリズムの構築である。センサはできるだけ小型であることを想定している。また、装着個所は競技者に違和感を与えないために、腰部としている。今年度の成果として、泳法判別、1ストローク開始タイミングの自動検出、ターン開始・終了タイミングを自動検出するアルゴリズムを考案した。泳法判別については、既存研究でみられたバタフライと平泳ぎの混同を解消するため、それらの判別に特化した時間・周波数領域特徴量およびアンサンブル学習(ランダムフォレスト法)を導入することで、全泳法(バタフライ、平泳ぎ、クロール、背泳ぎ)を高精度で判別するアルゴリズムを考案した。1ストローク開始タイミングの自動検出手法として、近年画像処理分野で高い成果を収めている深層学習を活用した。これにより、高精度でストローク動作開始タイミングを推定するアルゴリズムを考案した。ターン検出についても、時間・周波数領域特徴量およびアンサンブル学習を行うことにより、実現した。さらに、1ストロークの所要時間を高精度に把握するアルゴリズムを考案した。今後はより詳細な精度評価を行うとともに、システム化を行っていく。また、速度評価に関する検討も行うとともに、競技者に対し有益なフィードバックを行う手法の開発も行っていきたい。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、慣性センサにより競泳動作の自動判別手法に関する検討を行った。泳法判別およびターン動作の自動検出では、ランダムフォレスト法と時間・周波数領域特徴量を組み合わせることで、高い判別制度を実現した。1ストロークの開始タイミング検出器については、深層学習を活用することで高い精度を実現した。研究を進めている上で、身体動作の個人差(身長、体重、競泳の習熟度など)により、同じ動作を行っていたとしても、慣性センサにより得られる加速度・角速度信号が大幅に異なることがわかった。そのため、身体動作の個人差に対するロバスト性を保有した機械学習の実現方法に関する検討も行っている。これらに関連する成果について、複数回の学会発表を行うとともに、査読付き論文誌への投稿も行った。以上より、本研究課題については、順調に進展している。
今後は、各種自動判別手法の精度の向上を目指す。具体的には、使用する時間・周波数領域特徴量、分類器、個人差に対する判別精度の安定性を保証させるための方法を新たに検討する(H30年度前期)。また、加速度・角速度信号を速度に変換する手法の開発も進めていくとともに、ユーザービリティが高く、実運用が可能なシステムを構築していく(H30年度後期)。また、H30年度を通して国際会議や国内学会、査読付き論文誌への投稿など、研究成果の公表に努める。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)
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