研究課題/領域番号 |
17K13183
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研究機関 | 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター |
研究代表者 |
森下 義隆 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ科学部, 契約研究員 (50549483)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 野球 / バッティング / スイング速度 / 増量 |
研究実績の概要 |
近年,野球現場ではオフシーズンに体重を増加させることによって打撃パフォーマンスを向上させようという取り組みが多くみられる.しかしながら,この取り組みは,筋量を増加させることが目的なのか,それとも体重そのものを増加させることが目的なのかが明確化されていない.そこで本研究では,体重増加が競技力向上に与える理論的・力学的背景を解明し,増量に関する適切な指針を野球現場に普及させることを目的とした. 平成29年度は,体重そのものの増加が打撃パフォーマンスの向上に有効に作用するかどうかを検証した.大学野球選手17名を対象にモーションキャプチャシステムを用いて打撃動作を計測した.打撃動作は,通常の打撃に加えて,胴体に質量の異なる4種類の重り(重りを取り付ける装具のみ,体重の3%,6%,9%に相当する砂袋)を取り付けた打撃の計5種類の条件とした.ボール・インパクト直前におけるバットのスイング速度を打撃パフォーマンスとして各打撃条件を比較した結果,通常,装具のみ,3%の条件は同程度のスイング速度であったが,6%と9%は他の条件よりも有意に低くなることが示された.この結果は,一時的な増量,すなわち短期間で体重を体脂肪量によって過度に増加させるような増量は打撃動作の妨げになることを示唆するものである.平成30年度では,スイング速度を変動させる身体的特徴(形状,組成)や長期に渡って増量することの効果を検討するために,約3か月のトレーニング介入を行い,介入前後における身体形状・組成および打撃動作を計測する予定である.平成31年度は,29,30年度の計測結果をもとに適切に体重を増加させるための指針を作成する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請当初の計画通り,平成29年度では打者に重りを取り付けた打撃動作を計測することができ,データ収集に関しては滞りなく実施できた. 重りを取り付けたことによってスイング速度が低下した力学的な要因を明らかにするために,現在はバットと身体各部分の角運動量の経時変化を分析中である.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の計画通り,大学野球選手を対象にトレーニングの介入実験を実施し,介入前後の打撃動作と身体的特徴(形状,組成)を計測する予定である.研究初年度のデータ分析や先行研究を踏まえ,オフシーズンにおけるトレーニング内容や目標とする体重の増加量を決定する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,平成29年度に収集したデータの分析が遅れたことにより,国内外の学会で研究成果の発表ができなかったことと,当初の計画よりも実験の被験者を集められなかったことである. 次年度助成金は,研究成果の公表(学会発表,論文投稿など),およびデータ収集に必要な消耗品を購入するために使用する.また,計画している介入実験の参加する選手の状況を研究協力者と定期的に観察するため,選手が練習を行っている場所までを往訪する交通費として使用する.
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