研究課題/領域番号 |
17K13185
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
堀田 一樹 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 講師 (30791248)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 二光子レーザー走査型顕微鏡 / 骨格筋 / 微小循環 / 血管内皮 / 透過性 / 毛細血管 / 伸長性筋収縮 |
研究実績の概要 |
骨格筋微小循環の調節機構を明らかにするために,本研究では2光子レーザー走査型顕微鏡を用いて,ラットの微小循環の生体内イメージングを確立した.分子量の大きな蛍光物質(Rhodamine dextran)を血管内に投与することで,骨格筋毛細血管の3次元ネットワークを画像化した.通常,骨格筋の毛細血管は物質を外に漏出させないが,伸長性筋収縮により筋損傷を引き起こした場合には,血管内に投与された物質が血管外に顕著に漏出する様子を観察することができた.また,筋が損傷から回復過程に至ると,血管透過性は減弱することも明らかとなった(Hotta, et al. J Appl Physiol 2018).蛍光物質の血管外漏出容積については,画像解析ソフトウェアを用いて客観的な評価法を確立した.毛細血管の三次元ネットワークをみると,血管径ではなく血管の湾曲率が損傷筋で高まっていることが生体内イメージングにより明らかとなった.ストレプトゾシンの腹腔内投与による1型糖尿病モデルラットにおいては,骨格筋の血管外漏出容積が正常ラットと比べて高値を示した.興味深いことに,血管外漏出容積の高値は筋萎縮の進行と相関を認めた(Hotta, et al. The 2nd Joint Conference of Japanese Physical Therapy Society of Respiratory 2018).片側の総腸骨動脈を結紮した後肢虚血モデルラットにおいては,骨格筋の血流が低下しているにも関わらず血管透過性は亢進していることが明らかとなった(下津,第73回日本体力医学会 2018).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
正常ラットで運動誘発性筋損傷により骨格筋毛細血管の血管透過性が亢進することが,本研究により明らかとなりJournal of Applied Physiologyに論文掲載に至った.さらに,糖尿病や後肢虚血モデル動物での検討も進んだため,一部計画以上の進展を認めた. 一方で,骨格筋の血流速度の評価を当初計画していたが,ラットの呼吸に伴う体動が画像ノイズとなり評価が困難であった.ラットを人工呼吸器管理とし,ラットの呼吸数を統制することでノイズキャンセリングが可能であるかもしれないが,本研究ではラットの自発呼吸下でのイメージングを実施していたため解決に至らなかった.
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今後の研究の推進方策 |
運動や慢性疾患に伴う骨格筋毛細血管の形態的・機能的変化のメカニズムは明らかではない.今後は,骨格筋組織内の酸素分圧のリアルタイム計測を組み合わせることで,低酸素あるいは高酸素に伴う骨格筋毛細血管の形態的・機能的変化のメカニズムの一旦を明らかにすることができると期待している.リン光寿命の計測に基づく骨格筋毛細血管内の酸素分圧の計測を用い,酸素分圧の変化に伴う微小血管機能および血管内皮細胞形態の適応について検討する予定である.
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