研究実績の概要 |
本研究では、骨格筋損傷後のアイシングによって促進される線維芽細胞の動態及び線維化を助長する因子を明らかにするとともに、アイシングの悪影響を相殺し得る新たな介入法を見出すことを目的としている。2019年度は、骨格筋損傷後にアイシングと温熱刺激を併用した場合、温熱刺激の開始時期の違いがその後の筋再生能の違いを生じさせるか否かについて検討を行った。10週齢のWistar系雄性ラットを筋損傷群、筋損傷+アイシング群、筋損傷+温熱刺激(1日後 or 2日後)群に分け、ヒラメ筋と足底筋を薬理学的に損傷させた。アイシング処置は損傷直後の1回×20分のみとし、アイスパックを用いて行った。温熱刺激(42℃, 30分)は損傷1日後あるいは2日後から覚醒下で隔日に最大2週間行った。損傷7日後及び28日後にヒラメ筋と足底筋を摘出し、各種分析に供した。得られた結果は以下の通りである。 1. 損傷7日後及び28日後のヒラメ筋と足底筋の筋重量(体重比)の回復の程度に、アイシング処置のみ及び温熱刺激併用処置の影響は認められなかった。 2. 損傷28日後において、アイシング処置によってヒラメ筋の線維化面積は有意に増大した。しかしながら、温熱刺激を併用した場合、いずれの併用条件においてもアイシングによる線維化の亢進が減弱され、その効果は特に温熱刺激を損傷1日後から開始した条件で大きかった。ただし、両併用条件の線維化の程度は、損傷のみによって生じる線維化の程度を下回らなかった。 以上の結果から、骨格筋損傷後のアイシングと温熱刺激の併用は、温熱刺激の開始時期を早めることによってアイシングによる線維化の亢進を抑制できるが、その線維化の程度は無処置の場合と同等であることが示唆された。
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