本年度は、寒冷ストレスと精神ストレスの二重の生体負荷が過度な交感神経活動の亢進によって認知機能および持久的運動パフォーマンスに影響を及ぼすかについて検証するため、8名を対象に本実験を実施した。 実験は3試行からなり、はじめに持久的運動パフォーマンスを評価するための運動負荷を設定するため、多段階負荷による疲労困憊に至るまでの自転車漕ぎ運動を実施した。その後、寒冷ストレス有+精神ストレス有、および寒冷ストレス有+精神ストレス無の2試行をランダムに実施した。寒冷ストレス有では、ふるえを惹起しないように水循環スーツを用いて、循環水温10℃にて10分間、続けて15℃で50分間対象の皮膚表面を冷却した。精神ストレス有では、ストループカラーワードテスト500回×2セットを実施した。一方、精神ストレス無では、ドキュメンタリー映像を視聴させた。認知機能は、ストレス負荷の前後にフランカー課題およびトレイルメイキングテストによって反応時間および正確性を評価した。持久的運動パフォーマンスは、ストレス負荷後に80%VO2peak相対強度で疲労困憊に至るまでの運動継続時間として評価した。この間、寒冷および精神ストレスの負荷程度を、また交換神経活動の賦活度を定量化するため、唾液および血液を採取し、カテコラミン、コルチゾール等のストレスホルモンを分析した。また、全身の温度感覚と疲労感をビジュアルアナログスケールで、疲労度、気分、意欲については、複数の問いからなるアンケート形式によって評価した。 本研究の結果から、寒冷ストレスと精神ストレスによる二重の生体負荷が認知機能および持久的運動パフォーマンスへ及ぼす影響について明かにされ、これらの機序解明に資する考察を得た。
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