研究実績の概要 |
【目的】本課題最終年度では,麻酔下小動物(ラット)を対象に,13C安定同位体比分析を用いて,運動時糖代謝動態における定量評価法の開発を目的とした.【方法】12週齢~16週齢のオスSDラットを対象に,αクロラロース及びウレタンを腹腔内投与し,麻酔自発呼吸下で実験を行った.気管内チューブの先端に,宮本氏が小動物用に開発した低抵抗,少死腔量の一方向弁を取り付けた.呼気ガス濃度は質量分析計(ARCO-2000,ARCO社,千葉)を用いて連続測定し,breath-by-breath法にて,換気・代謝諸量の測定を行った.グルコースの代謝動態の測定には,13C安定同位体比分析システムを導入し,13Cを標識したグルコースの13C安定同位体比を質量分析計(ARCO-2000,ARCO社,千葉)を用いて測定した.運動は両坐骨神経遠心路への通電刺激を行い,下肢骨格筋の収縮を誘発することで模擬した.低強度(0.1-0.3V, 5Hz)および高強度(3.0V, 5Hz)運動はそれぞれ15分間行い,運動開始5分後に13C-グルコース液1.5cc(13C-グルコース50mg含有)を頸動脈より投与し,13C-グルコースの代謝動態を質量分析装置を介して観察した.【結果】心拍数および平均血圧は,運動によって増加し,高強度運動は低強度運動に比べて,有意(P < 0.01)に高値であった.低強度および高強度運動ともに,13C-グルコース液投与後,速やかに13C-グルコースの代謝が亢進した.また,13C-グルコースの代謝量は高強度運動が低強度運動に比べて,有意に高値を示した.さらに,13C-グルコースの代謝速度は高強度運動が低強度運動に比べて,有意に高値を示した.【結論】13C-グルコースを用いて,麻酔下小動物の運動時における糖代謝動態を評価することに成功した.
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