近年,様々なモノをインターネットに繋げる「IoT(Internet of Things)」を用いた商品開発や学術的研究が数多く行われている.本研究課題はヒトの動作を経時的に計測し,インターネットを介して理学療法士が動作を分析し,動作に関する指導を行うことができる新たなスマートヘルスシステムの開発を目的とした. 今年度はオンライン環境で運動・動作を分析するプロセスにおいて,1平面(矢状面または前額面)の映像のみで用いた場合に生じる動作の見落としについて検証した.その結果,矢状面映像においては前額面上の動作不備の見落としが,前額面映像においては矢状面上における動作不備の見落としが多いことが示された.このとこから,オンラインでの運動指導において,1台のカメラ映像のみで行うには限界がある可能性が示唆された.そこで,IMUセンサにより動作をキャプチャしたものを Computer Graphicsで再現し,自由な視点で動作を観察可能なアプリケーションを同時に用いて検証を行った.屋内においては磁場による影響などがあり,正確な再現は難しい状況ではあったが,カメラ映像と共に用いることで見落としの頻度は少なくなる可能性が示唆された.さらに,高齢者の歩行をカメラ映像とモーションキャプチャデータを用いた動作再現アプリを用いて,理学療法士による動作分析と運動指導を実施した.カメラによる撮影は固定された場所・撮影面での記録となるが,開発したアプリは再生アプリの中央に固定した状態で再生できること,拡大縮小や視点を自由に変えられることなどのメリットがあり,動作分析の補助ツールとして活用できることが示唆された.一方で,IMUセンサの精度や取り付けの課題など今後検証していく課題も示された.
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