日本におけるバイオバンク事業は近年増加傾向にあり、保管されたサンプルの利活用の議論が行われるようになった。本研究では2012年に設立された(一社)健康科学リソースセンター(Resource Center for Health Science:RECHS)のデータおよびサンプルを用いて研究を遂行している。RECHSは、人間ドック受診者から高品質なバイオリソース(BR)の保存および暦年的な健康のデータベース化を行っており、人間ドックの受診者の健康診断結果に加え、食習慣調査やストレス調査など、設問紙を用いた解析結果が入力されている。RECHSのバイオバンク事業に同意を得た被験者の約2%は、定期的な健康診断を受けており、経時的なバンキングがなされている。これらの被験者に対してパーソナルヘルスケアを可能にするため、前年度より引き続きデータベースからの情報抽出の工程の改善について検討を重ねた。 一方で、これまでの研究では、BRが保管された年数によって生じる測定値の変動、つまり初回の検査結果と保管されたBRの測定値がどのように変動しているのか、保管状況の影響について検討を行ってきた。その結果、総タンパク(TP)については変動が殆ど見られないことが分かった。同じ被検者のサンプルをさらに1年間保存した場合のデータを取得し確認した結果、変動が見られなかった。本年度は保管年数が10年を経過したことから、保管年数によって生じる測定値の変動について再び検討を行った。まず、データ検索システムを利用して条件に応じた検体を選定し、生化学的検査項目を選択して測定を行った。その結果、これまで報告してきた結果と比較して大きく変動した項目はなく、安定した保管ができていることが示唆された。
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