研究実績の概要 |
本研究は心血管疾患などのリスク増加につながる身体不活動あるいは座位行動など不適切な生活習慣を有する人の腸内細菌叢をを調査した上で、彼らに約8週間の有酸素運動と抵抗性運動を組み合わせた運動プログラムを提供して行動変容を誘導したときに、腸内細菌叢に起こりうる変化を、明らかにすることを試みた研究である。 12名の60-75歳の女性高齢者を対象に無作為割り付け対照試験を実施した。運動を実施しない対象群と運動実施群に割り付けを行った。介入開始時点において年齢、伸長、体重およびBMIには有意な差はなかった。介入手段は8週間の有酸素性運動と抵抗性運動を組み合わせた運動プログラムであった。脱落例はなく8週間後、運動群において空腹時血糖と血清コルチゾールに有意な変化がみられた。腸内細菌叢についてはOSI, CI, AI, Shannon Index, SImpson indexを算出したが、いずれも群間において有意な変化を検出するには至らなかった。 サンプルサイズが小さいための第二種の統計的過誤である可能性がある。本研究のデザインにおいてサンプルサイズの根拠となる腸内細菌叢のデータがなかったが、今回得られた腸内細菌叢のデータは今後の介入研究等の設計に有用であると考えられた。またメタゲノム解析結果には、変数化できる要素が残されており、細菌種に着目した分類等、今後引き続き解析を行う予定である。一方、糞便サンプルの取り扱いについて標準的な方法を用いているが、処理方法についても検討の余地があると考えられた。
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